職場でのコーチングの基礎
CONTENTS
職場でのコーチングの基礎
コーチングという言葉は既に市民権を得ました。多くの企業でコーチングによる人材育成が取り入れられています。どのようにしたら社内で効果的なコーチングを使った人材トレーニングができるでしょうか。優れたコーチングとはどのようなものでしょうか。
コーチングの目的
コーチングはエレベーターの中でちょっとした会話をしたり、改めて会議室を使って一対一で面談をする形で行う場合もあります。 いずれにしてもコミュニケーションをベースにしているのが特徴です。会話は上司から話す場合もあれば部下から相談を受ける形で始まる場合もあります。いずれにせよ目的は下記のようなものです。
- 社員の意欲を高める
- 会社や部門の業績を向上させる
- 人間関係を改善する
- 社員のキャリアを助ける
優れたコーチングとは?適切な質問をして傾聴すること

コーチングとはスポーツにおけるコーチから来ています。語源であるコーチというのは、日本語のコーチとほとんど意味は変わりません。野球をやっている人であればコーチと言ったら選手を指導する立場の人ですね。
アメリカンフットボールのコーチであるポールブライアンさんはこんなこと言っています。
「コーチが知っていても仕方がない。プレイをする選手が何をしているかが重要である。」
これはまさにコーチングの真髄を表している言葉です。コーチングはあくまでもコーチングされる社員の能力を引き出すことなのです。選手であれ会社で働く社員であれその人が自ら学び成長することを助けるのがコーチングの目的です。何かを指示したりアドバイスを与えたり問題解決をコーチングをする人がするのではありません。 主体はあくまでもコーティングされる社員や選手です。彼らが今ある課題を克服できるようにサポートするのです。
基本的に優れたコーチとは「適切な質問をして傾聴すること」です。
コーチングと仕事の指示をすることの違い
コーチングは上述したように相手に指示を与えるものではありません。ただ仕事を進める上に置いて社内では指示を出すことが当然あります。上司としてはコーチングをするときと指示を出すときときちんと使い分ける意識が必要です。
当然ながらコーティングをする社員がある仕事をしたことがない場合、きちんと指示を出して教える必要があります。こうしたことはコーチングではありません。
コーチングとはすでにその仕事のやり方を知っている場合、あるタスクを解決することにじ自信があり積極的な場合などです。逆にこうした時に指示命令を出すと出された側は「うざい」「煩わしい」と感じるかもしれません。細い指示を出すことで逆に仕事の邪魔をしてしまうかもしれません。
コーチングのやり方(GROWモデル)

リーダーとしての最も重要な役割の一つは、部下がベストを尽くせるようにコーチングすることです。そうすることで、部下がより良い判断を下したり、妨げとなっている問題を解決したり、新しいスキルを身につけたり、その他のキャリアアップを図ることができます。
幸運なことに、コーチングの正式なトレーニングを受けることができる人もいます。しかし、多くの人は、この重要なスキルを自分で身につけなければなりません。難しいと思われるかもしれませんが、いくつかの実証済みのテクニックを身につけ、練習し、自分の直感を信じれば、素晴らしいコーチになることができます。
GROWモデルは、コーチングやメンタリングのセッションを構成するための、シンプルでパワフルなフレームワークです。GROW は次の頭文字を指します。
- Goal (目標)
- Reality (現実)
- Options (選択肢)
- Will (実行)
①Goal (目標) を確認する
どんな活動でもそうですが目的や目標があるはずです。まずはコーチングのはじめに仕事や活動の目的や目標を確認します。
「あなたが達成したいことは何ですか?」「あなたの目的は何ですか?」「目的を達成したらどのような状態になりますか?」
このような質問を相手に投げかけましょう。
②Reality (現実) を確認する
目標の確認が終わったら次に現在がどのような状況になっているかを明らかにします。 現場つまずいていることがあればその原因が何なのかを探ります。 一見すると問題になっている原因が明らかなように思えることがあります。 本当にそれが原因でしょうか。 もっと根本的な原因があるかもしれません。
コーチングをするあなたとしてはまさに探偵のような役割です。 コーチングをする相手に次のような質問をしてみましょう。
- 本当に起きていることは何だと思いますか?
- このような状況になった原因は何だと思いますか?
- (ある人に原因があると思った場合)その人の立場になって考えるとどうでしょうか?
- あなたに全く非がありませんか? あるとすればどのような点ですか?
③Option (選択肢) を考える
活動や仕事の目的と現況の把握が終わったら、現在横たわる問題を解決するステップに入ります。 解決する手段はコーチングをされる人が自ら考えさせるように導きます。 解決する方法はひとつだけではないでしょう。いくつかのオプション(選択肢)が考えられます。 次のような質問を投げかけてみましょう。
- その課題を解決するために試したことはありますか?
- 他にどのような選択肢が考えられますか?
- 過去同じような課題を解決する時にうまくいった手法はありますか?
④Will (実践) する
ここで最後の段階に入ります。③で課題を解決する選択肢が明らかになったら、どの選択肢を選んで実行するか、どのように実践するかを確認します。 もし選択肢があまりよいものでなければ、この段階でアドバイスをしても良いです。その上で次のような質問をしてアクションを促しましょう。
- どの選択肢を選んでいつまでに実践しますか?
- その選択肢がうまくいったかどうかはどのように判断しますか?
- その選択肢を実践する上で障害となるものはありますか?
- 私から何かサポートが必要ですか?
この①から④までのステップはすべて質問から成り立っています。 質問の答えを知っている必要はありません。あくまでも適切な質問を投げかけるばいいのです。 様々な質問が考えられますがオープンクエスチョンでなければいけません。つまり「はい」か「いいえ」で答えられるような質問ではいけません。 また相手に本当に関心を持っていくことが重要です。 棒読みで質問をしたり上の空で目線をずらして質問するのはいけませ。きちんと相手の目を見て興味を持っているということを伝えることで 適切な質問も生きるのです。
(島田亮司)
参考文献
"Situational Leadership Theory: Providing Leadership through Flexibility"