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コロナ後を見据えた変革を進める8つのステップ

変革を進めるつのステップ

グレッグ・レステージ コッター・インターナショナル副社長
この記事は原著作者の許可を得て日本語に翻訳・加筆したものです。(翻訳:島田亮司)


あらゆるビジネスにおいて、その表舞台、裏舞台に関わらず「変革」というテーマは常に大きな話題となっています。その背景には、マーケットが日々めまぐるしく変化している現実があります。特に近年において、さらにコロナ禍やDXの時代において、その変化のスピードは私たちが追い付けない程、早くなっています。事実、戦略を実行に移すことのできない理由の7割が、変化に対応できていないためだと言われています。


そこで1996年、ジョン・コッター氏は組織の変革をリードするための8つのステップを提唱しました。この変革管理の手法は、既存の階級制度を残しつつ組織横断的にフラットな実行集団を作り、無理なく変革を進めていくやり方です。具体的には、『Leading Change: 8-Step Process』(Harvard Business School Press, 1996)という一冊の本にまとめられ、大きな注目を集めました。しかし、それから約20年以上が経過し、以前と比べて世の中の変化のスピードが格段にアップしました。コッター氏は幅広い現場調査を行い、この8つのステップを今の時代でも通用するよう改訂し、近著『Accelerate: Building Strategic Agility for a Faster-Moving World』(Harvard Business Review Press, 2014)に発表しました。改訂された8つのステップの概要は以下の通りです。

ステップ① 緊急性を作り出す

まず、トップに立つリーダーは社員の考えと気持ちを奮い立たせるような「マーケットの機会」について真剣に説明する必要があります。現状のままでは立ち行かなくなることを正直に話すと同時に、それを裏付ける客観的なデータを示します。その上で魅力的な会社の将来像を真剣に語り、組織の広範囲に渡って社員に緊急性を持たせ、やる気にさせることです。また、経営トップが真剣に取り組むことが何より重要です。


人事コンサルティング会社ケネクサの調査では、社員が積極的に仕事に取り組むと株主利益が5倍になるという結果が出ています。しかし実際には、米国ギャラップ調査では、71%もの社員が仕事への取組みに消極的で、そのうち16%は進んで消極的になっているというデータがあります。このことは米国の会社全体で年間3000億ドルもの損失につながっているとされています。

ステップ② 先導役のグループを作る

会社全体に緊急性ややる気が満ち溢れたら、次に変革を先導するグループを作る必要があります。グループを構成するメンバーは、部門や階層の垣根を越えて幅広く募集します。多種多様な人材を集めることで、様々な見地で物事を判断することができます。リーダーシップを取れる人が数名は必要ですが、このグループに階層を設けて風通しが悪く、堅苦しい組織にしてはいけません。そして、経営トップと連携を取りながら、他の社員と調整を図りながら、先導して実際の行動につなげていきます。このグループは変革の要です。マーケットの機会、戦略、実行にのみ縛られた組織にしなければいけません。私情を挟む余地はありません。また、大きな権限を与えられているため、説明責任を果たす必要があります。


既存の枠組みの外で構成されたグループこそ、変革につながる真のコラボレーションが期待できます。事実、イギリスの調査会社フューチャーファンデーションによると、全ての産業においてコラボレーションと変革の間に81%ものポジティブな相関関係があるとしています。

コッター氏が提唱する8つのステップ

 ステップ③ 戦略的なビジョンと行動計画を策定する

先導役を担うグループが組織されたら、経営トップと連携を取りながら、変革に必要な戦略的ビジョンを策定します。ビジョンは大胆且つ簡潔にまとまり、明確な将来像を想起させる真に迫ったものでなければいけません。また、行動計画には具体的な目標があり、将来像に到達するための戦略と直接的にリンクしていなければなりません。この様に、組織の多様な人材によって形作られた、また経営トップのお墨付きも得られた、信頼と信用ある将来のビジョンと行動計画をまとめあげます。


雑誌『ビジネスウィーク』によると、会社の存在意義と確固とした将来像をまとめあげた会社ほど、支柱となる事業の利益率が30%高いとしています。

ステップ④ 自発的な実行集団を組織する

次に、戦略的なビジョンと行動計画に共感するメンバーを社内で集めて自発的な実行集団を作ります。この段階でビジョンや行動計画に対して、懐疑的な目を向ける人が出てくるでしょう。だからこそ、このビジョンと行動計画は、絵空事ではなく、正しい情報や正確な分析に基づいた信用あるものでなければならないのです。しかし、この実行集団はそれほど多くの人数を必要としません。既存の組織の枠外で自由に、ビジョンに基づいて自発的に行動計画を実行するための人員は、全社員の10%ぐらいで十分です。5000人の会社であれば500人程度です。


米国ギャラップ調査によると、やる気があり積極的に仕事に取り組む社員は平均的な社員に比べて147%も生産性が高いという結果が出ています。

ステップ⑤ 障壁を除去して自由に活動させる

自発的な実行集団ができたら、彼らに自由に動いてもらえるように、既存の障壁を取り除く必要があります。必要な経費を宛がうことだけでなく、非効率で官僚的な既存のプロセスを排除したり、コミュニケーションが円滑になるような対策を施したりするなど、自由に活動できる環境を与えます。階層主義、封建的な枠組みではなく、自由闊達な共同作業によって生み出された変革にはインパクトがあります。


米国のコンサルタント会社DDIのレポートによると、44%の経営者は自らの管理手法が官僚主義的で問題があることを認めています。

ステップ⑥ 短期的に収穫を祝う

最終的な成果はそこに至るプロセスの中で生じる小さな結果、あるいは収穫の積み重ねです。一つ一つの小さな収穫を集めて、分析し、社内で共有することです。せっかく組織された自発的な実行集団の評価が揺らぐことがないように、彼らの働きが会社の利益に直接結びつくことを、多くの人に認知してもらうことが重要です。短期的に生じる良い収穫を祝うことで、実行集団の士気が高まり、より高い次元の成果にもつながります。より効果的な手法を生み出した、新しい協力関係を構築した、あるいは新しい顧客を見つけた、といったことで十分です。こうした短期的な収穫を集めると、最終的な目標に至るまでのプロセスが量的、質的にも明確になります。


もし仮に、小さな収穫を得られる見込みがなければ、何かが間違っていると思ってください。過去に下した判断を微調整したり、判断に基づいたやり方を少し見直したりすることが必要かもしれません。

米国の著名な著作家セス・ゴーディン氏は、「一夜の成功のかげに6年間のハードワークがある」と言っています。

 ステップ⑦ スピードを維持する

変革を先導するトップや実行部隊は変革のスピードを維持するために、自らもそのスピードに合せて日々の仕事に邁進する必要があります。可能性を持った人材を社内で見つけたり、不必要な業務プロセスを排除したり、絶えず経験から学ぶ姿勢を保ち、安易な勝利宣言をしてはいけません。さらに、外部状況の変化に応じて新たな行動計画を策定する必要性も出てくるでしょう。


また、数字となって現れる成果を追い求めるだけでなく、他の社員から情熱を引き出すことも重要です。変革のスピードを緩めると、社内の政治的、文化的な圧力が頭をもたげ、せっかく興った変革の動きが従来の階級組織に収斂されてしまう恐れがあります。そのためにも、ステップ①で述べたように、トップが情熱を持って緊急性を訴え、自らが変革の模範にならなければいけないのです。但し、中身の伴わない表面的な情熱や緊急性は、逆に非生産的な結果をもたらすので注意が必要です。


マサチューセッツ工科大学の調査によると、小回りの利く組織のほうがそうでない組織に比べて、37%早く結果を出し、しかも30%も利益率が高いという結果が出ています。

 ステップ⑧ 変革を常態化する

ステップ①から⑦までのプロセスを一回限りではなく、常設のプロセスにして常に組織を変革に備えた状態にしておくことが重要です。動きの早いビジネス環境に対応したこの新しい仕組みを活用し、従来の組織形態と二人三脚で変革をもたらすのです。ある変革の手法が有効だったとしても、それが組織に取り込まれ活用されなければ意味がありません。そのためにはこの新しい仕組みが結果を生み、会社の成功につながることを社員一人ひとりが自覚できるようにすることが何より重要です。


エコノミスト・インテリジェンス・ユニットの調査によると、90%もの経営者がビジネスの成功には組織の迅速な行動が決定的な鍵を握ると信じています。

以上が新しく改訂された八つのステップの概要です。1996年に提唱されたものと比べて大きく変わった点がいくつかあります。この変革プロセスを継続的に行うこと(ステップ⑧)、自発的な実行集団を組織すること(ステップ④)、そして実行組織を自由に活動させること(ステップ⑤)などです。


私が特に注目した点が2つあります。まず、ステップ④の自発的な実行集団についてです。規模、スピード、多様性、パワーを組み合わせてビジネスに活用するのは非常に難しいのですが、この実行集団はそれが可能なのです。この4つの要素をうまく活用すると、大きな組織でも新しいマーケットの機会に素早く柔軟に対応することができます。いくつかの会社を例に挙げましょう。

ある中古車販売の会社では、業界勢力図やバイヤーの購買行動の大きな変化に対応するために、国内70支店の9000人もの従業員が、自発的な実行集団を組織して対策に取り組みました。また、航空防衛関連の会社では、社内に成長文化を醸成すべく自発的な実行集団を募ったところ、募集枠の350人を超えて2300人が集まりました。ステップ③の戦略的なビジョンと行動計画を強く訴えたことで、幅広い支持が集まったのです。


合併という内部の大きな変化に対してもこの自発的な実行集団は有効です。ある2つの出版社が合併して業界で最大規模の新会社が誕生したとき、かつてはライバル関係にあったそれぞれの営業部隊が、自発的な実行集団を組織して、人とシステムの統合という合併における最大の障害を乗り切ることができました。

そして私が2つ目に注目したのは、ステップ⑥の短期的に収穫を祝うことです。これは大きな変革を成し遂げる上でも、大変有効な手段だと思います。小さな収穫の積み重ねが成功につながると言いましたが、短期的に収穫を祝うことは、経理的な数字だけではなく、企業文化の面でも良い影響を与えます。費用削減や利益創出の努力を祝うことで、具体的な考えや行動が売上や利益に結びついていることを実感できます。また、何かを達成し収穫が得られたら、そのことを広く告知することで、ポジティブな雰囲気が社内に満ち溢れ、もっと何かを達成しようと多くの人が前向きになります。


先に挙げた会社のユニークなところは、変革の目標に貢献したものだけでなく、企業文化に寄与したものも収穫として見なそうとしていることです。細かくも積極的にたくさんの小さな収穫を集めて、分析、評価することで、ビジネスの成功とそこに至るまでの結果との関係性が明らかになります。さらに、それぞれの収穫が詳述され表彰されることで、新しい動きが社内の隅々まで波及し、後に続こうとする人が増えるでしょう。

これらの会社の自発的な実行集団は、小さな収穫と最終的な成果を集めて記録しています。先の中古車販売の会社では、自発的な実行集団が、10か月足らずで、2000もの収穫を上げ4000万ドルもの売り上げ増に貢献しました。また、合併した出版社は、営業部隊の6割が組織統合を進めるための21の行動計画に参加し、12か月で企業文化の統合を果たすことができました。


現在のビジネス環境は20年前と比べて大きく変化しています。こうした収穫を意識的に生み出す努力は、持続的に大規模な変革を行うために、益々不可欠なことになってきていると強く感じます。小さくとも多くの収穫が生み出すエネルギーは、変革の動きに水を差す動きを払拭する役割もあります。経済のグローバル化に伴い、3次元チェスのように変化の激しいビジネス環境においても有効です。


先の見通せないビジネス環境において、あなたの会社はどのように変革を進めていますか?どんな方法が有効ですか?有効であるのはどうして分かりますか?良いアイデアがあれば是非教えてください。

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