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あるいは上司で、最も素晴らしい影響を与えた人物は?:「H」で考えるリーダーシップ、理想の上司とは?

ケン・パールマン (コッター・インターナショナル専属のコンサルタント)

この記事は原著作者の許可を得て日本語に翻訳したものです。(翻訳:島田亮司)

「H」はマジックレターなのをご存知ですか? マジックナンバーは馴染みがあるかもしれませんが、今回は数字ではなく、レター(文字)のお話です。

私の娘は、毎週20もの単語リストを作って、綴りテストをする年頃になりました。毎週月曜日に新しい単語を学んで、それらをその週のうちに覚えて、金曜日に自分にテストを出すのです。しかし、英語は複雑な言語です。ルールや発音が、世界中の色々なところから集まって出来上がった言語だからです。文字と発音が不規則なため、娘にとって綴りを記憶するのが難しい単語もあるようです。覚えやすくするために、語呂合わせにするなど工夫して勉強しています。例えば、together(一緒に)という単語を to get her(彼女を捕まえる)と分解したり、母音がたくさんある単語は、歌にして覚えたりしています。

最近、クイズで娘を悩ませたのは、neighbor(近所)とthrough(~を通して)、という2つの単語でした。複数の母音と子音が混ざり、しかも発音されない「H」を含む単語をどのように覚えればいいのでしょうか。娘は考えあぐねていました。そこで気づいたのは、「H」はマジックレターではないか、ということです。

ここでリーダーシップのレッスンに、マジックレター「H」を当てはめて考えてみたいと思います。

「H」には、他の子音の発音を変化させる力があります。例えば、「SH」のshow(見せる)、「TH」のthought(考え)、「CH」のchange(変化)、「PH」のphenomenal(驚異的な)などを見ればお分かりのように、「H」とコンビを組むことで発音だけでなく言葉の意味が決定します。「H」は地味なようで、実は大きな役割を果たしているのです。それがマジックレター「H」と呼ぶ所以です。では、「H」を組織におけるリーダーとして見立てると、どうなるでしょうか。

私たちコンサルタントが日々、クライアント企業と関わる中で、初めに必ずする質問があります。「あなたは今までに出会ったリーダー、あるいは上司で、最も素晴らしい影響を与えた人物はどなたですか。どうしてそう思いますか」といったことを尋ねます。彼らの答えは驚くべきことに、文化、年齢、業界、社会的地位、言語の差異に関わらず、大抵同じようなものです。例えば次のような内容です。

  • 「自分の今いる状況を、別の角度で見るようにしてくれました」
  • 「自分一人では為し得なかったであろう、新しくより良い結果を出すことを助けてくれました」
  • 「私には自信がなかったが、その人は私を信じて新しいことや、今までと違うことをさせてくれました」
  • 「私にチャレンジさせてくれました。私は失敗を通して学び、そして成長することができました。私が必要と思ったときに、いつもそばにいてサポートしていました。特に、計画通りに進まなかったときはいつも助けてくれました」

最もプラスの影響を与えるリーダーとは、下の者の可能性を信じて権限を与え、本当のリーダーに生まれ変わることを手助けする人です。彼らは自分の強みや弱みを押し付けるようなことはせず、下の者が投げてくるものを全て受け止めて、何かを加えて投げ返すのです。あくまでもイニシャチブは彼らに与えたままです。そうして、一人では成し遂げられないことを達成させる手助けをするのです。余談ですが、C&Hというハワイで取れたサトウキビから作る砂糖製造会社がありますが、工場があるC(カリフォルニア)と原料が取れるH(ハワイ)が合わさって最高の砂糖が作られるのです。

あなたは部下を育てるリーダーシップの素質はありますか?

しかし、「H」はもろ刃の剣でもあります。「H」の使い方を誤ると逆効果になります。下の者の成長の芽を摘み取ってしまう、弱体化させる「H」のマイナス要素もあるわけです。もう一度、neighbor と throughという単語を見てみましょう。「G」は発音されません。つまりこの場合、「H」は「G」の存在を消してしまっているのです。「H」の存在が大きすぎるのです。つまり、「H」という存在、組織でいえば上司、マネージャーまたは経営者ですが、彼らが下で働く社員に対して同じような、マイナスの影響を与えている可能性があるのです。

「H」の作用には功罪ありますが、この場合は罪の方の話です。私たちはクライアント企業の担当者に、逆の質問もします。「今まで一緒に仕事をしてきて、フラストレーションが溜まったのはどのような人物ですか」。つまり、いちいち仕事の進め方に口を出して、身動きを取れなくさせ、しまいには会社を辞めたいと思わせるような人です。会社の行き帰りで、辞表を出すときの文句を頭でシュミレーションしなければならなかった。そのようなことはなかったでしょうか。その人は具体的にどのようなことをしたのでしょうか。これも大体同じような傾向があります。

  • 「その上司は物事を良くしようと、自分から何かをしようとはしませんでした」
  • 「その人は隅から隅まで、自分のやり方で仕事をするように、私を管理しました」
  • 「その上司を避けることはできません。他の部署、あるいはその上司を迂回して、さらに上の上司と仕事の調整をしようものなら、まず出世は望めません」
  • 「その上司は私の仕事や会社への情熱をことごとく打ち砕きました」

私たちの経験上、そうした上司は年齢的にも若く、リーダーとしての経験も少ない人が多いようです。もちろん、若くしてマネージャークラスまで昇進したのですから、成績も良く、仕事はできる人でしょう。但し、リーダーとしての要素は欠けているのです。

あるマネージャーの下で働く社員は決まって離職率が高い、といったことはよく聞く話です。良くないのは、そうした状況を放置して、会社として何の手立ても打たないことです。その様なマネージャーは、今までのやり方に固執して、会社が何か危機的な状況に陥ってもやり方を変えようとはしないものです。こうしたマイナスに作用する「H」は、本当のリーダーを望んでいる社員を麻痺させてしまいます。そして、会社として何もできずに「H」をのさばらせておくことは、会社にとって非常に大きな問題です。

クライアントとのやり取りの中で、最後に次のような質問を投げかけます。「あなたの下で働く人の気持ちになって考えてください。あなたにプラスの影響を与えた理想のリーダーのように、あなたにリーダーシップを植え付けさせた人のように、現在リーダーとして育ったあなたは、部下に何をすべきでしょうか。リーダーシップの芽を伸ばさない人、潜在的な力を押しつぶしてしまうような人になっていないでしょうか」?

ケン・パールマン

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