世界的な観光地なのになぜホテルがないのか?

(トレンサップ湖の教会)

カンボジアにある東南アジア最大の湖、トンレサップ湖には水上家屋で生活をしている人たち(漁民)が密集して水上集落をつくっています。 その数およそ100万人。トンレサップ湖の水上 集落は地上の集落とほぼ変わりはなく、アンテナを立ててテレビを受信している家屋もあれば、雑貨屋さん、美容院、金物屋などの商店、学校や小規模な病院(保健センター)、魚醤(魚の脂でつくる調味料) の加工工場などがあります。

とくに陸地にあがらなくても一通り生活できるだけのものはそろっています。最近はトンレサップ湖を観光する外国人が増えたので、外国人相手のミニ動物園やお土産屋も出てきました。集落での移動にはもちろん船をつかいますので、学校への登下校も船になります。 小さな子どもの遊びも船遊びです。炊事、洗濯や水浴びは湖の水を使います。 トイレはそのまま湖がトイレになります。 買い物はどちらかというと水上商店が、集落を一軒一軒まわってくることが多いようです。外国人観光客用のお土産屋の船も観光客用の船を見つけては近づいてきます。

漁船の中には遠くまでに出かける船もあ り、こうした船にはモーター(船外機)がつけられていて、船外機を動かすのに必要な燃 料は湖の上を移動している水上ガソリンスタ ンドから調達します。 ガソリンスタンドのブランドがいくつかあり、BPだったり、 シェルだったりするところも陸の世界と同じです。 水上集落はベトナムのハロン湾にも見られ、 そこにも同じように水上の学校や商店はあり ますが、船のガソリンスタンドはありません。 それだけトンレサップ湖の水上集落の方が規模も大きく、船が人々の生活に根付いていることを表しています。

トレンサップの乾期と雨期の大きさの違い
トレンサップの乾期と雨期の大きさの違い

しかし、この観光資源豊かなトンレサップ 湖にはホテルといった宿泊施設はありません。 観光客はすべてアンコールワットがあるシェムリアップの街からやってきます。 ホテルの建設ラッシュにわくシェムリアップですが、 トンレサップ湖上に水上ホテルを稼働させる計画はありません。

その理 由は乾期には湖の水が蒸発し、湖の大きさが雨期の3分の1ほどに縮んでしまうというこの湖独特の事情があるからです。 満水時には14 メートルにもなるといわれている水深も、乾期には1メートルほどしかなくなり、観光客 に食事と宿を提供できるような大型の船は通行できなくなってしまうのです。

また、湖の収縮にあわせて移動する集落では建物の所在地が季節によってかわってしまい外部の人を迎える宿泊施設の運営は、小型の船を使っても難しいという事情もあります。 トンレサップ湖の夜は水上集落に住む人だけが経験できるものなのです。

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