在日ベトナム人の日本に対するポジティブな意見とネガティブな意見
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出入国在留管理局の報道発表資料によると、令和5年末時点での日本の在留外国人数は、過去最高の341万992人に達しました。前年末から10.9%(33万5,779人)増加しており、特にベトナム人の増加が目立ちます。ベトナムからの在留者数は、前年比75,714人増加し、総数は565,026人となり、中国に次いで2番目に多い国籍となりました。
この増加は、日本における技能実習生や留学生の増加が主な要因です。また、他の上位国としては、中国(821,838人)、韓国(410,156人)、フィリピン(322,046人)が挙げられます。これらのデータは、日本が多様な国籍を持つ外国人にとって魅力的な移住先となっていることを示しています。
実際にベトナム人同士が情報交換をするSNS(例えば、YBOX.vnやFacebook グループのCộng đồng người Việt Nam tại Nhật Bản)を見てみると、以下のような意見が見受けられます。
ベトナム人が日本や日本での仕事・キャリアについて持つポジティブな意見
- 高い給与水準: 日本での仕事はベトナムと比較して給与が高く、生活水準を向上させることができる。
- 技術と知識の習得: 日本で働くことで、高度な技術や知識を習得し、帰国後にキャリアを活かすことができる。
- 職場環境の整備: 清潔で整った職場環境や、厳格な品質管理がベトナム人にとって学びの場となる。
ベトナム人が日本に対して持つポジティブな意見で特に多いのは、高い給与水準と技術や知識の習得機会です。日本で働くことで、ベトナムよりも高い収入を得られるだけでなく、高度な技術や専門知識を学ぶことができると評価されています。また、日本の労働環境が清潔で整っている点や、厳格な品質管理を通じてプロフェッショナルとして成長できる点もポジティブに捉えられています。
仕事以外で日本に対するポジティブな意見として次のようなものがあがっています。
- 安全性: 日本は犯罪率が低く、治安が良いことが高く評価されています。
- 清潔さ: 街や公共の場が清潔で整っていることに感謝されています。
- 高い生活水準: 生活インフラが整っており、交通機関や医療サービスが充実している点が評価されています。
このような意見は、ベトナム人だけでなく、様々な国籍の在日外国人に共通するものであり、ベトナム人だから特にそうであるというわけではありません。
日本に対するネガティブな意見
- 長時間労働: 労働時間が長く、ワークライフバランスが取りにくい。
- 過度のストレス: 高い仕事のプレッシャーや社会的な期待がストレスを増大させる。
- 職場の上下関係: 年功序列や厳しい上下関係があり、意見を言いにくい雰囲気がある。
- 言語の壁: 日本語の習得が難しく、コミュニケーションに苦労する。
- 異文化の適応: 異文化に適応するのが難しい、特に礼儀やマナーの違い。
- 住宅費の高さ: 特に都市部での家賃が高く、生活費がかかる。
- 差別や偏見: 外国人に対する差別や偏見を感じることがある。
- 孤立感: 社会的なつながりが作りにくく、孤立を感じることがある。
- 行政手続きの煩雑さ: ビザ申請やその他の行政手続きが複雑で時間がかかる。
- 社会的圧力: 集団主義的な文化が個人の自由を制約することがある。
次に日本に対するネガティブな影響を見てみましょう。上の意見は多くの在日外国人も同様の意見を持つ一方で、特にベトナム人の中で頻繁に耳にする意見として、言語の壁と長時間労働が挙げられます。日本語の習得が難しく、職場や日常生活でのコミュニケーションに苦労することが多いです。また、日本の労働環境における長時間労働は、体力的・精神的な負担となり、特に技能実習生や工場労働者にとって大きな課題となっています。これらの問題は、ベトナム人が日本で仕事をして生活をする上で主なストレス要因になっています。
ベトナムと日本の労働文化の違い
ベトナムと日本の労働文化の違いを理解することで、ベトナム人をより深く理解し、日本での生活や仕事において、彼らに対するケアをより的確に行うことができるのではないでしょうか。以下の点に留意しておきましょう。ただし、ベトナムは南北に長く、地域によって労働文化に若干の違いが見られます。
1. 長時間労働:
- 日本: 長時間労働が一般的で、定時後の残業や仕事の効率よりも努力が重視される文化があります。
- ベトナム: 長時間働く場合もありますが、特に政府部門や一部の職種では、厳格な労働時間が守られる傾向があります。
ベトナムでは長時間労働は一般的に認識されていますが、日本と比べるとその程度や文化的な受け入れ方が異なります。ベトナムでは、農業や一部の工場労働で長時間働くこともありますが、日本のような厳格な時間管理や高い仕事のプレッシャーが伴う場合が少ないです。特に日本の労働文化では、定時を過ぎて働くことや、残業が日常的に行われることが多く、ベトナム人労働者にとってはストレスとなることがあります。
2. 仕事と私生活のバランス:
- 日本: ワークライフバランスを取るのが難しく、仕事が生活の中心になることが多いです。
- ベトナム: 家族や私生活が重視され、仕事と私生活のバランスが比較的取りやすいとされています。
3. コミュニケーションスタイル:
- 日本: 間接的で、礼儀や敬意を強く重んじるコミュニケーションが一般的です。
- ベトナム: 日本に比べてややフレンドリーで直接的なコミュニケーションが多いです。
4. 上下関係:
- 日本: 厳格な年功序列や上下関係が存在し、上司の指示に従うことが重視されます。
- ベトナム: 伝統的な社会では上下関係が重要視されますが、日本ほど厳格ではなく、状況や環境に応じて変わることが多いです。
5. 効率と成果:
- 日本: 努力やプロセスが評価され、結果よりも過程を重視する傾向があります。
- ベトナム: 効率や成果が重視され、結果にフォーカスすることが多いです。
冒頭に触れた通り、ベトナムは南北に長い地形を持ち、地域ごとに労働文化に若干の違いがあります。一般的に、北部は伝統的で保守的な労働文化が強く、規律や上下関係が重視されます。一方、南部は比較的開放的で商業活動が活発であり、効率や成果がより重視される傾向があります。このような地域差を理解することで、ベトナム人労働者に対してより適切な対応が可能になります。
ベトナム人社員の定着率を高めるためには
そして長時間労働や言語の壁といった課題に対処するためには、ベトナムの文化や労働習慣を理解し、日本の職場環境に適応するためのサポートが重要です。効率や成果を重視するベトナムの労働文化と、日本の年功序列やプロセス重視の文化の違いを理解することで、より良い職場環境を提供できるでしょう。
また、日本の賃金水準の高さや技術力の評価は高い一方で、企業には継続的な賃金上昇と、従業員が成長を実感できるような職場環境や制度の構築が求められています。他のもっと条件の良い会社があれば、転職してしまうでしょう。従業員がやりがいを感じ、長期的に活躍できるような企業文化を醸成することが、ベトナム人の定着度を上げることにつながります。