社内・職場における社員の承認欲求を満たそう!

同僚や部下を承認する効果

アメリカの心理学者アブラハム・マズローのMaslow's hierarchy of needs(人間の欲求の階層)はあまりにも有名ですが、 こうした欲求はいつの時代でもまた民族の違い、国籍の違いをたがわず現在でも有効ではないでしょうか。 この欲求の中に承認の欲求というものがあります。 これは是非社内でも実行したいことです。

例えば、金曜日の就業後を想像してみてください。あなたは疲れ切っていて、横になったら今すぐにでも眠れそうです。今週はとても忙しかったようです。自分が今週成し遂げたことに満足していますか?上司や同僚は、今週のあなたの仕事ぶりを評価してくれましたか?

来週になったら、また新たなスタートを切りたいですよね。もしあなたが上司だったとしたら、部下がはつらつと仕事をして、努力してくれたら、最高だと思いませんか?

部署の皆にもっとがんばってもらいたい、前向きで情熱的な社員になってもらいたい、やる気を出し仕事に打ち込んでもらいたい、と言うのは簡単です。しかし、管理職にあるあなたは忙しさにかまけて、仕事に関わることで現在起きている素晴らしい出来事や、部下の努力への感謝の気持ちを伝える時間が取れていないことがよくあるのではないでしょうか?

この1週間を振り返ってみてください。部署にいる部下に感謝を伝えましましたか?彼らの貢献を組織の中で見えるようにしましたか?

上司から定期的に承認や感謝を受けている社員
上司から定期的に承認や感謝を受けている社員

Harvard Business review の記事(『the human era @ work Findings from The Energy Project and Harvard Business Review』)によると定期的に承認や感謝の気持ちを与えると、社員は53%集中力がアップし、仕事に対するエンゲージメントも58%アップ、そして109%定着率がアップすることがわかりました。

同じ記事によると、社員に「上司がもっと部下に仕事に取り組んでもらうにはどうすればいいか」という質問をしたところ、58%が「承認欲求を満たしてほしい」と回答したそうです。

また、別のハーバードビジネスレビューの記事(『The Ideal Praise-to-Criticism Ratio』by Jack Zenger and Joseph Folkman)では、最もパフォーマンスの高いチームは、社員同士が肯定的なフィードバックを否定的なフィードバックの5.6倍与え合っているという結果が出ています。 肯定的なフィードバックというのは「それはいいアイデアですね」「お疲れ様!」「私は賛成です!」 といった受け答えで、否定的なフィードバックというのはその逆で、「私は賛成できない!」「それはどうでしょうか。あまりいいアイデアとは思いません」 といったコメントを返すことです。

さて、あなたはどうしていますか?あなたは十分な承認を同僚や部下にしていますか?社員の承認欲求を満たすことで「パフォーマンスの向上」「社員のモチベーションアップ」につながるのです。

職場における承認の仕方(承認欲求の満たし方) 

その人にあった承認を心がける
その人にあった承認を心がける

では実際にどのようのような形で同僚や部下の承認欲求を満たせばいいのでしょうか。「よくやったね!お疲れ様!」 といった月並みのねぎらいばかりでは継続的な効果はあまり期待できません。原則として「その人に合った方法で承認する」ことです。

例えば同僚に田中さんという人がいたとします。彼は仕事で新規企画を担当しています。この3週間、彼は一生懸命働きました。この企画では、厳しい納期の中でリーダーシップを発揮し、毎晩仕事を持ち帰ることが求められただけでなく、通常の役割以上のことをしなければなりませんでした。そうした中でも、彼はすべてをスケジュール通りにこなし、新規企画は大成功に終わりました。

この田中さんの努力は承認されてしかるべきです。しかし、どうすれば彼にとって意味のある承認になるでしょうか。田中さんに成果を発表させる機会を与えればいいのでしょうか?田中さんの成果を他の部署や先輩に公表する方が良いのでしょうか?田中さんのためにランチをご馳走したりなど、彼にとって最も意味のあるものは何でしょうか?

これを正しく理解することが重要です。田中さんが価値を認めず、必要としないのであれば、どんなに長い感謝のメールを送っても、どのようなお祝いを企画しても意味がありません。

承認はその人にとって最も意味のある方法で行うことが重要です

相手にとって意味のある承認をするには?

あなたの部署の同僚は、どのように承認されたいか知っていますか?みんなに公にして承認した方がいいのか、あるいはプライベートで承認した方が良いのでしょうか?ランチをご馳走するよりも、休暇を与えた方が喜ばれるでしょうか? その社員にあった報酬や表彰をしましょう。

同僚や部下であればだいたいどんなタイプか分かると思いますが、改めてそれぞれの人の 価値観を探っておきましょう。 また大きな成功を収めた時は、その人がどのように承認されたいか聞いてみることが一番良い方法です。 

  • 「あなたはどのように評価されたいですか?」
  • 「あなたにとって最も重要なことは何ですか?」
  • 「感謝されていると感じるのはどんな時ですか?」

こんな質問をしてどんなタイプか認識しておくことが大事です。どのような形で評価するかは、状況によって異なります。彼らが最も重要だと思っていることに基づいて、賢く選択してください。

社員を承認するときの注意点

ある個人を承認するのはとても良いことですが、同じ部署で働いているチームとして特定の一人だけを評価するのではなく、同じ部署で努力している他の社員(部下)や、仕事上関係する社員も評価しましょう。 他の同僚からやきもちを焼かれないようにするのも大事な点です。 「なんであいつばっかり褒められてるの?」と他の同僚や部下から思われないようにしましょう。 

また承認するにしても嘘の承認では相手にわかってしまいます。 社交辞令的に承認している、あるいは表面的に褒めていると相手にすぐにバレてしまいます。 心からの承認でなければいけません。 本当に褒めなければいけません。 根も葉もない承認はマイナスの効果になってしまう場合があります。

そして、時機を逸することなく承認することも大事です。タイムリーであることが重要であるのは言うまでもないことでしょう。

様々な承認欲求の満たし方

承認の仕方も無数にある
承認の仕方も無数にある

社員が承認欲求満たされ、自分の価値を認められていると感じるための方法は、上司や同僚からのメールや口頭によるメッセージだけでなく様々なものが考えられます。

  • その社員が成長し輝ける機会を与える。
  • その社員が知っていることを他の同僚に教える機会を与える。
  • その社員が自分で判断できるようにする権限を与える。
  • その社員に質問をして意見を求める。
  • その社員に自ら目標を設定する機会を与える。

承認欲求は単純に同僚や部下に質問をすることでも満たすことができるのです。質問をされると「頼られている」と感じるからです。 LinkedIn にある記事には、 86もの承認欲求の満たし方を紹介しています。 英語の記事ですが、興味がある方はぜひご覧ください。『80+ Ways to Recognize Self and Others』

  • その人を称える面白い詩を作る。
  • 相手のLinkedInアップデートに「いいね!」をする。
  • 会議で一緒に発表することを提案する。
  • 重要なプロジェクトに参加してもらうよう提案する。
  • 彼らが成長できるように、より多くの責任を与える。
  • 親しい家族や友人との集まりで、その人の価値を認める。
  • お茶やコーヒーを作ってあげる。
  • 機密情報を伝える。

など、非常にユニークなものもたくさん紹介されています。

同僚同士の承認のすすめ

同僚同士の承認を奨励しましょう
同僚同士の承認を奨励しましょう

職場で社員の承認欲求を満たすのは、 上司の役割だけではありません。同僚同士、仲間同士で承認し合えるようにしましょう。上司やマネージャーあるいは社長が褒めたり、感謝したりするだけでは意味がありません。同僚がお互いに認め合うことも重要です。

あなたがもしマネージャーに相当する立場にあるのであればが、模範を示してみましょう。頻繁に承認行動を行い、さらに部署内の部員同士がお互いに承認し合う事を奨励しましょう。同僚同士が頻繁に認め合うことで、彼らは自分が大切にされていると感じ、仕事にも積極的になり、同僚と有意義な関係を築くことができます。

この承認というのは褒め合うのとは少し違います。もっと具体的にこのような仕事をすることによってどんな意味があったのか、仕事の成果について承認するのです。

具体的な同僚同士の承認のやり方ですが、自然にできるまでは部署内で定期的に社員同士がお互いを評価する方法を設定しましょう。例えば、会議の中で数分間、同僚を承認する時間を設けるのも一つの方法です。同僚同士の承認は、ポジティブな雰囲気を醸し出し、コラボレーションとチームワークの意識を高めることにつながります。

まとめ

日本電産の永守社長は社員を叱って叱って育てたまに手紙を書いて褒める、というようなやり方で人材を育成してきたそうです。 今もそのようにやってるかどうかはわかりませんが、褒める時は一人一人にきちんと感謝の念を込めて手紙を書いたそうです。 これは上述の否定することの5.6倍承認することとは真逆ですが、おそらくこの手紙というものが社員の承認欲求をとてつもなく大きく満たしたことでしょう。

承認欲求を満たすことで従業員のやる気が高まり離職率も下がることが分かっています。褒めることに近いのですが、承認欲求とは、一連の作業の中での達成などに対して与える承認なので、もう少し構造的なものです。 人によって承認欲求の意味合いが違うので、その人その人に合わせた承認をカスタマイズしましょう。 また上司からだけでなく同僚同士の承認もとても大事です。 そして妬みや嫉みを抱かれないように特定の個人だけでなく、部下全員をまんべんなく承認するようにしましょう。

(島田亮司)


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