AIによって人々の生活は向上するのか?

2023年は人工知能(AI)の急速な発展をめぐって、希望に満ちたニュースもあれば、露骨な恐怖を抱かせるニュースもあった。その背景には、技術革新がすべての人にとって大きな利益をもたらすのか、それとも一部の人々だけのために進むのかという疑問がある。

昨年ベストセラーになった、『Power and Progress: Our Thousand-Year Struggle Over Technology and Prosperity』著者であるサイモン・ジョンソン氏によると、AIが労働者の安全と生産性を向上させて高賃金をもたらすこともあれば、人々の仕事を奪う可能性もあると指摘。

この書籍の中で彼は技術進歩の歴史をつぶさに調査。技術は常に変化しているが、必ずしもすべての人の繁栄につながるわけではない。中世の農耕具である鋤や、1000年以上前のヨーロッパにおける農業技術の向上などは、生産性を高めたものの、一般市民の生活条件はほとんど変わらなかったことがわかったと言う。

さらに産業革命では、織機技術が劇的に進歩。ラッダイト運動と呼ばれる機械打ち壊し運動が起こったが、壊されたのはまさにこうした機械だった。ジョンソン氏は、織機が自動化されると、それまで手織り機織工だった人々は仕事を失ったり、収入が減ったりしたと説明。なぜなら、織工こそが稼ぎの良い仕事だったからだ。こうした機会は失われ、代わるものはなかった。労働者は仕事を失い、事業主は潤っただけだったのだ。

『Power and Progress: Our Thousand-Year Struggle Over Technology and Prosperity』の要約

本書は、技術革新が経済成長、生活水準の向上、医療の進歩など、多くのメリットをもたらす一方で、失業、格差の拡大、環境破壊などの問題も生み出すという二面性を持つことを明らかにしている。著者は、技術革新の恩恵を広く行き渡らせるためには、政府による適切な制度や政策が必要であると主張。

本書の構成

本書は、序章、3つの部、そして結論から構成。

序章では、技術革新と繁栄の関係の歴史的な概観
第1部では、技術革新が経済成長と生活水準の向上にどのように寄与したか
第2部では、技術革新が失業、格差の拡大、環境破壊などの問題を生み出すメカニズムが考察
第3部では、技術革新の恩恵を広く行き渡らせるための政府の役割について

本書の主要な論点

  • 技術革新は、社会に大きな影響を与える。
  • 技術革新は、繁栄と問題の両方を生み出す。
  • 技術革新の恩恵を広く行き渡らせるためには、政府の役割が重要である。

技術革新と経済成長

本書は、技術革新が経済成長の主要な原動力であることを強調。著者は、技術革新が新しい産業や製品を生み出し、生産性を向上させ、労働市場の拡大をもたらすことを指摘。

技術革新と格差

一方で、本書は技術革新が格差の拡大につながる可能性についても警鐘を鳴らす。著者らは、技術革新が熟練労働者と非熟練労働者の間の賃金格差を拡大させ、富の集中を加速させると指摘する。

技術革新と環境問題

さらに、本書は技術革新が環境問題を引き起こす可能性についても論じる。著者らは、技術革新が資源の枯渇、汚染、気候変動などの問題を悪化させると指摘する。

政府の役割

本書は、技術革新の恩恵を広く行き渡らせるためには、政府による適切な介入が必要であると主張。著者は、政府が教育、研究開発、インフラ整備などに投資することで、技術革新を促進すべきであると指摘。また、政府は労働市場の規制や社会福祉制度などの政策を通じて、技術革新による負の影響を軽減する必要があると主張。

本書に興味を持った方は、ぜひ実際に手に取って読んでみていただきたい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です