日本とミャンマーの似ている宗教観

 ミャンマー中部、かつての王朝の都バガンから南東へ50キロほど離れたところに民間信仰である「ナッ神」の一大聖地のポッパ山があります。この山の中腹や頂上には いくつもお堂がありますが、そこには仏像と並んで多くの人間の姿の像が並んでいま す。 表情はリアルなものが多く、一般のビ ルマ人とほとんど変わらない服が着せられているので実際の人をモデルにしたのかと見間違えますが、これは「ナッ」と総称さ れる精霊神の像なのです。

ポッパ山

彼らはもともと人間だったのですが、最高ナッ神の「インドラ・ナッ」以外は非業の死を遂げて神格化された超人たちで全部で3人います。もともと仏教が民間に広まる過程で、土着の民間宗教や伝承が取り込まれていったのです。仏教の教えとは本来異なるものですが、ミャンマーでは仏教と共存しておりしばしば仏教寺院の一角にこのナッ神が祀られて います。日本でも寺院の境内の一角に神道の社があったりしますが、菅原道真や平将門など実際の人物を死後に神格化して祀ることがある日本の神仏習合に似ています。

 人々は家庭や身の回りで不幸が起きたり、また願い事があるとナッ神に供え物をしたりして、 霊を慰めます。また相談事がある時には、「ナッカドー」と呼ばれる霊媒師(シャーマン)にお伺いをたてることがあります。もともと女性がしていたというナッカドーですが、現在では 「女装した男性」あるいは「自分は女性だと信じている男性」がなるのが普通です。 彼らは性を超越した存在として、男性神と女性神のどちらも呼び出すことが出来るといいます。このナッカドーが音楽に合わせて踊るうちにトランス状態になり、ナッ神が憑依して神のお告げを語るのです。

 どんなナッ神がいるか、一つ例をあげてみましょう。 家の守護神の「マハーギーリ・ナッ」 は兄妹神です。 昔、ある王が自分を脅かすという男の命を狙います。しかしその男は森に逃げ たため、王は男の妹を王妃にして男を誘い出します。 やがて男は捕まり火あぶりにされますが、 その時に悲しんだ妹も火に飛び込んで死んでしまいます。 やがて兄妹の霊は大樹に取り憑いて人々の命を奪うようになりますが、その霊を鎮めるために兄妹の霊はポッパ山に祀られるようになったといわれています。

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