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なぜアメリカは銃規制をしないのか?

アメリカの銃社会

2022年5月、銃に関わる2つの大きな事件がアメリカで起きました。 一つはニューヨーク州の黒人が多く居住する町のスーパーマーケットで、10人が無差別に射殺された事件。犠牲者は32歳から86歳で、他に3人が負傷しました。もう一つは、テキサス州の ユバルデと呼ばれる小さな町にある小学校で、21名が亡くなった事件です。 そのうち19人が子供で、全員10歳前後。犯人は半自動小銃を用いて無差別に乱射。テキサス州史上最悪の学校銃乱射事件となりました。

こうした無差別銃乱射事件が度々起きているにも関わらず、銃に関する規制が進まないのはなぜでしょうか?

逆に銃規制を緩和する動き

アメリカは50の州を抱え、それぞれ独自の法律が施行されています。アメリカは日本と同様に死刑制度があるとされていますが、実際には約半分の27の州でのみ死刑制度が確立しています。銃規制も同様で、カリフォルニア州は全米で最も厳しい規制が布かれていますが、テキサス州などの内陸地域では銃規制が緩い傾向にあります。また、全体でみると銃規制が強まるどころか、逆に緩和する傾向にあります。

2022年時点で25の州が銃に関する規制がまったくない

上の図は2022年時点における全米の銃規制の様子を表した図です。緑色の州では銃所持に関してなんの規制もありません。変遷を見てみると2010年を境に、全米各地で銃規制が緩くなってきているのがわかります。これは憲法修正第2条に規定されている「武器保有権」が州に対して適用されるとの判決が2010年に確定したためです(McDonald v. Chicago事件)。バックグラウンドチェック、つまり身元調査をして過去の犯罪歴や精神病の有無などを調べることなく銃を販売できることを意味します。

アメリカで銃規制がない4つの理由

ニューヨークタイムズのコラムニスト、デイビッド・ブルックス(David Brooks)によると、主に4つの理由があると言います。

  1. 憲法で保障された権利であること(これは上記の憲法修正第2条のことを指します)
  2. 自分たちの安全は自分たちで守るという倫理観があること
  3. 政府が脅威を与えているという考え方があること
  4. 銃は今や田舎暮らしの神話的象徴であること

政府が脅威を与えているというのは共和党員に多くみられる考え方で、とくに田舎のほうでは根強く残っています。彼らは小さな政府を支持し、銃の権利は政府からの脅威を防ぐための手段なのです。また、4つ目の銃が田舎暮らしの神話的象徴というのは文化的な問題でもあります。田舎の人々は銃の権利を支持し、「沿岸部のエリートが私たちの生き方にとやかく言う筋合いはない」という対抗意識を持っているのです。

多くの人は何らかの銃規制の必要性を感じている

銃所持に年齢制限はない
長物銃の個人販売に年齢制限はない

ロイター通信が5月25日に発表した調査では、アメリカ市民の84%が銃器販売で購入者の経歴調査をすることを支持、公共の安全に脅威とされる人物の銃を差し押さえる「レッドフラッグ法」の支持も70%に達したそうです。

車の運転に対する規制と同じようなことが銃に対してもできるはずです。たとえば、長物銃(ライフル銃と散弾銃などの)は、連邦法の規定によると、認可を受けた販売業者が18歳未満の未成年に販売することを認めていません。しかし、無免許の個人は、年齢に関係なく、ライフルや散弾銃(およびその弾薬)を販売したり譲渡したりすることができるのです。なぜこのような抜け穴があるのでしょうか。車の場合、交通違反をして免停になった人が運転できないようにしています。銃の取り扱いでも、事件を起こした人は銃を使えないようにするなど、様々な規制を作ることができるのになぜできないのでしょうか。

アメリカの文化問題

ユニバーサルバックグラウンドチェックも大事な規制の一つとして考えられます。上記で述べたように、これは個人の経歴を調査することになりますが、田舎にいる人は次のように考えます。「なぜ、私の妻が身元調査を受けなければいけないのか?子供にも?」。また、右派、特に共和党には憲法修正第2条を聖典のように神聖視する人々がいます。彼らにどんなことを話しても、銃規制に関するいかなる変更にも同意しません。「また、本来は国民を信頼するのが政府であり、身元調査をするのは国民を信頼していないからである」。銃の所有者はこのように解釈します。政治家も身元調査をすることに賛成すれば国民から信用されなくなり、選挙で損をすることを恐れていると言われます。

以前、沖縄へ旅行にいったアメリカの友人がいました。東京に飛行機で戻る日に、「スキューバダイビングをしたい」というので「気圧の関係で飛行機に乗る日にダイビングをするのは危険だ」と諭しても意に介さなかったことを覚えています。自分の身体は自分で守るという意識が強いのでしょうか。あるいは、マッチョであることを誇りたいのでしょうか。銃規制については、アメリカの文化の問題にも深くかかわっている問題です。

すでに4億丁もの銃が出回っている

とはいえ、これからいくら規制しても仕方がないと考える人も多くいます。すでに4億もの銃が市中に出回っているのです。一人一丁以上の銃になります。日本に登録されている車の数が約7800万台ということを考えると、膨大な数です。「フランケンシュタインを作りだしてしまった。もう誰も制御することができない」と揶揄する人もいます。多くのアメリカ人が「アメリカ固有の大きな問題で、国の恥である」とも考えています。今後どのような展開になるのでしょうか。少しずつでも規制していく方向に進まなくてはなりません。

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