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なぜベトナム人は日本を嫌いになって帰国するのか?

日本の入国管理局によると、2020年6月下旬時点での在日外国人の総数はおよそ288万6000人で、2018年の同時期からおよそ20万人増加しています。但し、2019年末時点では約293万人だったので、今年に入ってからはコロナウイルスの影響で減少しています。

国籍別では中国人が約78万6830人で最も多く、次いで韓国人の約43万5459人そしてベトナム人の約42万415人となりました。ベトナム人の数はここ数年で激増し、今年に入っても増え続けています。コロナ後の来年や再来年以降には韓国人を抜いて第2位になる見込みです。

最近、大阪や東京などの大都市でベトナム料理のお店を見かけることが多くなりました。バインミー(フランスパンを使ったサンドイッチ)やベトナムコーヒーなど一度は聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

大阪にあるバインミーのお店

ベトナム人の在留資格としては技能実習生が最も多く、およそ22万人と半分以上を占めています。特定技能や高度人材を含めるとほとんどのベトナム人が仕事で日本に住んでいることになります。

人口の高齢化と労働者不足に対応し、経済成長を維持するためにも、政府は今後5年間に35万人あまりの外国人労働者を受け入れる予定で、今後もベトナム人の増加が見込まれます。

日本が嫌いになる理由とは?

ホーチミンの街並み

最近、ベトナム人が日本を嫌いになって帰国するという声をよく耳にするようになりました。街はきれいだし、社会制度も整っている。また衛生状態もよく、食事はおいしいし、四季折々の自然も美しい。また何より、治安がよく買い物にも便利です。それなのになぜ日本を嫌いになるのでしょうか?

旅行者であれば表面的な日本しか見ずに、上記に挙げたような良いところしかわからないでしょう。しかし、仕事をして生活してみると、日本の生活文化やルール、仕事の進め方やビジネス習慣に直接触れるようになります。そして、なにより日本人とより密接にかかわることになります。そこで戸惑いが生じます。

ベトナム人にとって日本人のきらいなところ(良くないところ)

東南アジアという比較的暑い国に住むベトナムの人にとって日本人はどのようにうつっているのでしょうか?

①日本人はまじめすぎる

日本人の特徴として「まじめさ」というのはベトナム人に限らず、様々な国の人から聞かれることです。真面目(まじめ)さとは「勤勉」であるとも言えます。実は、多くのベトナム人に日本人の良いところを聞くと、「勤勉でまじめなところ」と答えます。つまりこの「まじめさ」というのはベトナム人個々人の価値観によって評価が変わってくるのです。もちろん、日本人によってもまじめさの度合いが違いますので、ベトナム人が接する日本人によっても評価が異なります。

②時間に厳しすぎる

時間に厳しい

よくアフリカの人は時間のルーズで、遅れてきても決して怒ってはいけない、というようなことを聞きます。アフリカとひとくくりにするのはいかがなものかと思いますが、暖かい国の人たちは時間をそれほど厳格に守る習慣がないのかも知れません。日本でも沖縄では「ウチナータイム」(沖縄時間)なる概念があり、約束の時間に平気で遅れてくるということがあるそうです。

この時間に厳しいというのは、日本人はまじめすぎるということの裏返しかも知れません。またベトナム人といっても日本と同様に南北に広い国土がら、北のハノイと南のホーチミンとでは文化や習慣に違いがあるそうです。南の人は概して時間にルーズとのことですので、この意見は南のベトナム人が多く感じていることだと思われます。

③本音、本心を言わない(思っていることを正直に言わない)

ベトナム人は初対面でも年齢を聞いたり、給料の値上げを直接要求したり、正直に物を言うことに慣れています。また聞かれた人もはっきりと物を言うことを期待されます。北の方のベトナム人は割と日本人っぽいところがありオブラートに包んで話すことが多いと言われますが、概して日本人が正直に本心を話さないことにちょっとしたフラストレーションを感じているようです。

日本には本音と建前という文化があり、いろいろな解釈が可能ですが、ことコミュニケーションにおける本音と建前は、元々、「相手の気持ちを傷つけない配慮」から来ているものです。やんわりと遠回しに言うことで、直接言わない。直接言うと相手の心証を害してしまうからです。

京都では訪問先で「ぶぶ漬けでもいかがどす?」と言われたら早く帰ってくださいという合図、というのは有名な話ですが、ある銀行員が「近くに来たらまたぜひ寄ってください!」と言われて、真に受けて行ったら怒られたというエピソードもあります。京都の人は「いけず!」と思う日本人もいますが、これも相手への配慮から来ている立派なコミュニケーション手段なのです。

その他

上記以外にもたくさんの意見があります。「先輩後輩の上下関係」や「外国人に偏見を持っている」などです。ただし、ベトナムにも上下関係はありますし、年上か年下かで、YOUにあたる二人称の使い方が違ったりします。また、外国人に対する偏見は、日本人でも人それぞれであり、諸外国でも見られる根の深い問題なので、こことでは取り上げません。

ただ一つだけ、気になった意見としては「レディーファーストの文化がない」というものです。これは確かに日本にはない、あるいはあまりない文化です。逆に、レディーファーストをする日本人男性が輝いて見えることがあります。ベトナムはかつてフランスの植民地だった関係で、レディーファーストの文化が根付いていると言われます。

「女性は半歩下がって男性についていく」というような日本の文化はそろそろ見直したほうがいいのかも知れません。

日本を好きになってもらうには?

旅行で訪日した外国人に対しては、お客様として接しおもてなしをすることで日本に良い印象を持ってもらうことは比較的簡単だと思います。日本の食事はおいしいし、街はきれいで整頓されているし、四季折々の自然も大変美しい。

しかし、就労ビザを取得して日本に住み、仕事をしている外国人に日本を好きになってもらうには、より深いレベルでのコミュニケーションが必要です。

相互理解の必要性

ベトナム料理交流会

日本人は「まじめすぎる」という悪い評価を持つベトナム人がいることは上述の通りですが、具体的につっこんで聞いてみると「ルールに厳格である」ということがわかりました。例えば、仕事の手順を教わったベトナム人がしばらくすると自分流に勝手に手順を変えたり、あるプロセスを飛ばしたりすることがあります。ベトナム人としては「こっちのほうが早く終わるし、楽にできる」と思っているのです。日本人がそのことを発見し、叱るとベトナム人には不満がたまってしまいます。

もちろん、ベトナム人の手順のほうが早く作業が終わり、効率的かも知れません。しかし、この手順というのはその職場、あるいは業界が長い間かけて築いてきたやり方で、必ずその理由があります。正しい手順に則って作業をすることで不良品が出ず、正確で品質の良い加工ができるとか、自分だけでなく、他の人にも安全であったり、道具が長く使用できたり、そのあとの工程がスムーズにいく等、様々な理由があるはずです。これは製造業だけでなく、サービス業でも同じことが言えます。また経理処理といった事務作業でも同様です。

こうした手順が生まれた背景や、なぜこうしたやり方をするのか理由をきちんと教えることでベトナム人の不満を解消するができるでしょう。こうした情報を伝えるには聞き手のベトナム人にある程度の日本語能力が必要です。日本語の美しさでもある微妙のニュアンスで伝えると理解されません。こうした場面では遠慮せずに正直にきちんと伝えることが大切です。

ベトナム人に対する日本人の理解も必要

最近、豚を食用にするために解体したベトナム人技能実習生が逮捕される事件がありました。「と畜場法」違反とのことですが、豚を窃盗の疑いもかけられています。生活や食べるものに困って行った犯罪でしょう。川で魚を釣るベトナム人の姿もSNSでアップされています。

日本に住んで生活しているのだから、外国人も当然日本のルールや習慣を理解しそれに従って行動してもらわなければいけません。お金に困ったからと言って法律を犯していいわけではありません。そして、日本の法律はもちろんですが、職場の勤務規則もそうです。業界、その会社独自のルールや規則があります。またコンプライアンスに対する理解も必要です。

但し、日本人もベトナム人を理解する必要があります。ベトナム人を雇うということは何らかのメリットがあるからです。「賃金が安い」というのが一番の理由でしょう。賃金が安く、比較的まじめで、熱心で、肌の色も同じ…。という評価はよく聞かれます。逆に、要求が多く、プライドが高いという悪い評価も聞かれます。もちろん「ベトナム語が話せる」「ITの技術が高い」など他にも様々な理由がありベトナム人を雇用していることでしょう。

同じ人間として扱い、ベトナム人の生産性を高め、雇用する側もされる側もお互いがハッピーになるには、ベトナム人に日本を理解してもらうだけでなく、日本人もベトナム人を理解する必要があります。

いろいろなコツがありますが、最低限言えることは、「日本人とは違う」ということを理解することです。日本人なら理解できること、日本人なら言わなくてもわかること、それがベトナム人にはわかりません。先ほどの「なぜこの手順を踏むのか」、「なぜこのルールがあるのか」、その理由をしっかり説明することが重要です。時間がかかったり、言葉の壁があったりするでしょう。それでも雇用する側の責任として手間暇を惜しまずきちんと教育をすること。ベトナム人を雇用するメリットを享受している側として、この手間暇は責任であると思うことが大切なのではないでしょうか。