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週末農業ブーム:癒し、交流、教育、婚活?その背景にあるもの

「ニンジン、かぼちゃ、ピーマン、ごぼう、白菜、トマト!収穫するのがめっちゃ楽しい!」と声を張り上げて応えるのは小学4年生のまさと君。「スーパーのより味が濃い。ニンジンは切った瞬間からニンジンの香りがする」とまさと君のお母さんも自分で好きなものを植えて収穫するのが楽しいと話す。「もう3年目の契約に入る」とお父さんは満足する。7歳になる娘さんと4人で15平米(3メートル×5メートル)の土地を借りて、主に週末に農業を楽しんでいる。

現在日本では、週末や仕事の合間に農業を楽しむ家族やカップルあるいは独身の会社員などが増え、いわゆる「週末農業」が盛んだ。畑を小さく区切って期限付きで貸し出す「貸し農園」を利用する人は200万人(2008年レジャー白書調べ)に及ぶと言われ、農業就業人口260万人に迫る勢いだ。ブームに乗ろうと、都市の宅地や駐車場を貸し農園に作り変える企業が登場したり、農業人口の高齢化や後継者不足に悩んでいた農家が土地を一般の人に貸し出す、「貸し農園」によって活気を取り戻すケースが出てきている。

 そんなブームの一翼を担う民間企業がマイファーム。社長のKazuma Nishitsujiは「日本全国で増え続ける耕作放棄地を解消する目的で会社を立ち上げた」と話す。耕作放棄地を地主から借り上げ、無農薬の野菜作りを手軽に楽しめる“貸し農園”にリメークし、子供がいる家族や独身の会社員、あるいは定年退職した一般の人たちに貸し出している。今では全国70カ所、利用客は2500組に登る。

マイファームの貸し農園の看板

 冒頭の4人家族が借りている農園は兵庫県の高級住宅地で有名な西ノ宮地区にある。車で10分ほど下ると立派な家が立ち並ぶ。「このあたりは市街化調整区域だから、新しい建物が建てられない」と話すのはマイファームに土地を貸している地主のTakashi Takadaだ。大阪などの大都市に住む住民にでも車で30分程度の便利な場所にあり、周りが山で囲まれ緑豊かな環境で農業を体験できるとあって、160区画あまりのほとんどが埋まっている。かつてここでビニールハウスを7つ立て農作物を収穫していたTakadaは「年間180万円の収入にしかならなかった」といい、税務署職員から「こんなんでどうして食っていきますの?」とよく尋ねられたという。その後、貸し農園のビジネスに転換しマイファームを通して一般の人に農地を貸し出し、さらにマイファームに頼らず自ら集客して貸し出す農地も経営することで、「もう少し頑張れば年収600万にはなる」と意気込む。

西ノ宮地区の貸し農園(マイファームが運営)

現在は25歳になる息子のNobumitsuに管理を引き継ぎ、月10万円をもらっているそうだ。年金と合わせれば贅沢はできないが充分に暮らしていける金額という。Nobumitsuはかつて自動車の修理業者で働いていたが「自分で作物を作って売るのはしんどいが、これなら(貸し農園なら)やっていける」と思い昨年からこの仕事に取り組んでいる。

お客さんの畑に水をやるNobumitsu Takada

農家が使っていない自分の農地を貸し農園にリメークすることで収入が増え、一般の人たちに農業の機会を提供し喜んでもらい、それにより耕作放棄地が解消されれば、一石三鳥。この西ノ宮のマイファームの貸し農園の1区画(15平米)の月々の賃料は5250円。自治体が運営するいわゆる“市民農園”と比べると割高だが、「(マイファームの)サービスには不満は全くない」と別の家族は話す。「ここだと、農機具も貸してもらえるし、肥料もただでもらえる」という。平日は電機メーカーのエンジニアとして働く家族で利用している40代の男性も「作物の作り方を教えてもらえるので助かる」と話す。

 

 このような形で主に週末農業を楽しむ人たちの始めるきっかけは様々だが、「息抜きのため」「収穫するのが楽しい」「癒されるため」「子供の成長のため」「無農薬の野菜がほしいため」といった声が多い。中には、はまってしまい、もっと大きな場所を借りるため別の貸し農園に移る人もいるという。コンピューター関係の仕事に就く40代の独身男性は、「ここでいろいろ教えてもらって、5年後には一人で農業が出来るように独立したい」と語る。以前は別のところで借りていたが、誰も教えてくれる人がいなかったため、作物がうまく実らなかったという。同居する両親から栽培を頼まれたサニーレタスもうまくいかなかった作物の一つで、「リベンジの意味もあり、今度は成功させたい」と意気込む。

 

・交流を求めて・

上述したように、貸し農園を借りている人に始めるきっかけを尋ねても「交流のため」という声は直接は聞こえない。だが、Nishitsujiは「みんな絶対(交流したいという気持ちを)持っています」と断言する。「単に無農薬の野菜がほしいのであれば、スーパーにいって買ったほうが安い。ここに来るということは、プラスアルファ欲しているものがある」という。具体的にプラスアルファとは気軽にあいさつを交わせるような雰囲気や自然であったり、農作物の作り方やおばあちゃんの知恵的な知識だったり農業が持っている全体を指すという。お客さんに交流の機会はないか直接尋ねてみると、「隣の区画の人と育てている作物のことで気軽に話す」という人や「子供同士が虫取りを一緒にしたりして仲良くなった」という家族連れがいた。マイファームでは秋の収穫祭やBBQイベントなどを通し、お客さん同士が交流する機会を設けたり、独身者向けに「畑で婚活」という畑を舞台にした、いわゆるお見合いパーティーをしたり農地の様々な可能性を引き出している。千葉県で農業の実践教室を行っている有限会社フォトシンセシス代表のYuki Takahashiは「あいさつだけで仲は深まらない。農業という共同作業を通して人間関係ができる」と話す。「畑で婚活」イベントでは農地という場所を活かし種の作付けを男女で一緒に行うことで相性を判断してもらうとのこと。

<サイドバー:耕作放棄地>

耕作放棄地とは、農作物が1年以上作付けされず、農家が数年の内に作付けする予定が無いと回答した田畑、果樹園などの農地のこと。原因は農業を続ける人がいない後継者不足が大きい。現在その面積は40万ヘクタールにのぼり、ほぼ滋賀県の広さと同じだ。「実際にはこの倍はあるでしょう」と語るマイファームのNishitsuji社長は、「測量するのは各自治体。自分達の土地が廃れていると思われたくないので、なるべく低い数字を出すようにしている」と分析する。いまでも年々この耕作放棄地の面積は増えているが、貸し農園が増えてきていることもあり、増加率は減ってきている。

<サイドバー:週末農業>

この記事のキーワード「週末農業」のルーツは2001年に出版された宮崎隆典氏の著書『「週末農業」を楽しむ本』で生まれたと考えられている。既に発行から10年以上が経ち、言葉としてはかなり定着し、グーグルの検索結果でも67万件がヒットする。

<Sidebar: Abandoned Farmland>

Abandoned farmland (kousaku-houki-chi) means fields, orchards or other farmland that has not been cultivated for one year or more, and regarding which the farming household has responded, there are no plans to cultivate within the next several years.  The most common cause is that there is no one to take over the farm.  At this time abandoned or dormant farmland has reached 400,000 hectares, about the same area as Saitama Prefecture.  Myfarm president Nishitsuji says “There is probably more than twice this number in reality,” since “Each municipality is responsible for counting the abandoned acreage.  They don’t want it to be known that their own land is in disuse, so they try to give out the lowest numbers possible.”  Today the acreage of abandoned farmland continues to grow every year, but as kashi-noen land also increases, the rate of growth has slowed. 

<Sidebar: Weekend Farming>

The origin of the term weekend farming (shumatsu nougyou) is thought to be in the 2001 book by Takanori Miyazaki “The Fun of Weekend Farming.”  More than 10 years have passed since the book’s publication and the term has taken hold, with more than 670,000 hits yielded in a Google search.