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リーダーを志すには:『リーダーを志す君へ』 松下幸之助著の内容

一昔前、政治家養成塾が脚光を浴びていた。大前研一の一新塾、小沢一郎政治塾、日本政策学校などは比較的前にできたものだが、その後、元橋下市長の維新政治塾、嘉田知事の未来政治塾、そして政党お抱えの、民主党大学東京、TOKYO自民党政経塾、みんなの政治塾、かけはし塾等、枚挙に暇がなかった。しかし昨今、そうした政治塾の話は聞かれなくなった。一時のブームが去ったというべきだろうか。

 本書はそんなときどき世間を騒がせている政治塾の元祖とも言うべき松下政経塾の塾長としての創設者が語った講和録をまとめたものだ。当時の一期生30名の募集には900名を越える応募があり、厳正な選考の結果23名が入塾することになったことなどが創設者の声を通じて語られている。最近できた維新政治塾等が応募者が殺到して定員を増やして対応したということとは全く逆をいく方針だ。政治が多くの人に身近になってほしいという理由があるのかもしれない。あるいはどんな人でも政治家になるチャンスがあるということを訴えたいのかもしれない。しかし、近年悪名高い「ポピュリズム」という呪縛にはまってしまっているとしか思えない。

 政治は「数の力」ということは分かるが、きちんと勉強をし鍛錬を積んだ人が政治家になるべきだ。本書を読んで強く思った。名古屋の河村市長が市議会議員に大量の素人議員を送ったことで市政が混乱したことなどはいい例だろう。政経塾は当初は5年間(今では4年間)の修練を経て卒塾となる。それも毎日である。それぐらいの覚悟と見識を持った人が国の大事にあたる、それがあるべき姿なのだろう。しかし政経塾の卒業生に対しては風当たりも強い。あるテレビの討論番組で「(政経塾の出身議員は)弁舌さわやかで中身がない」と揶揄したパネラーがいた。一期生の野田首相もメディアで叩かれている。私も野田首相がいい政治を行っているとは言わないが、野田首相以上の政治家が何人いるだろうか。以下の政治家のほうがはるかに多いと思う。

「日本は一番繁栄していい国」という項目では、ユーゴスラビアのチトー大統領が30年その地位に付き国内に様々な民族がありながらも安定した政権運営をしたと讃えている。日本はその間に10人ぐらいの総理大臣が変わったといい、「そういうことでは十分な政治はできない」と嘆いている。今の状況はそれよりもひどい。そして、「一億の人口があって、ほとんど一民族、一言語である。こんな国はほかにありません。だから、日本は繁栄してもいいわけです。気候・風土は一番いいし、日本が困るというようなことは本来ないわけです。だから、日本は世界で一番繁栄しても、それは当たり前でしょう」と説いている。今の政治家に最も持ってほしい基本的なスタンスだ。そして「百年後の日本の青写真を」という最後の項目も全ての政治家に共通して持ってほしいビジョンだ。今から22世紀の日本の青写真を描きそれに向かって政治家が方法論を討議していく。そうすれば枝葉末節は事柄に捕らわれて二進も三進もいかない政治から開放されるはずだ。

「お互いの五十年なり七十年の生涯というものは、永遠の過去、未来をつなぐ大きなつなぎ目である。そして、そのつなぎ目に故障があってはいけないわけで、最善のつなぎ目にならなくてはいけない。そのような最善のつなぎ目ということを、われわれは自覚することが大切です。」(創設者)

このような自覚を持った政治家が少なすぎることが問題なのだろう。

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