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海外から学ぶ:職場のキャリアカウンセリングのやり方

海外から学ぶ:職場のキャリアカウンセリングのし方

日本でも最近は転職をすることはそれほど珍しくなく、むしろ活発になってきました。元々海外特に欧米の方では会社を転々とすることはよくあることです。しかし古今東西同じ人間として仕事をする上で求めているものは同じではないでしょうか。

当然生活をするために生活をしているので仕事に対する金銭的な報酬というのは必要不可欠ですが、他にどんなことを仕事をする上で望んでいるのでしょうか。アメリカの調査では以下の要素が研究で明らかになりました。

  1. 感謝の気持ち:何気ない挨拶もそうですが仕事が終わった時にありがとう!一言感謝の言葉をかける。(感謝を示すことで、離職を防ぐ効果もあります)
  2. 権限の付与:意思決定の権限を与え、自分が仕事をコントロールしている意識を与えます。
  3. ワークライフバランス:多様な人生が考えられる中で、このワークライフバランスは時代の要請です。
  4. 個人の成長と向上:成長感じる時に人間はとても喜びを感じます。ロールプレイングゲームでも自分が操るキャラクターがどんどんレベルアップして強くなっていくのは面白いですよね(笑)
  5. 透明性の高いコミュニケーション:ガラス貼り経営でもそうですが自分が社内のことを知っているか知らないかによって従業員の満足度が大きく変わります。

しかしこれだけではありません。 長期スパンで考えた時にキャリアというものを意識します。自分はこの会社でどれだけ昇進できるか?この会社で自分が本当にやりたいことはあるのか? 自分が転職した時に今までのキャリアは通用するか? 

副業が解禁され、一人取りの仕事のやり方が多様性を極めてくると、ますますキャリアを意識したカウンセリングというものが職場でも必要になってきます。もちろん離職を防ぐという効果があるのですが、どうしてもやりたい仕事が会社で見つからない場合転職をするということも当然ながら考えられます。

そうした時に円満退社をすることで、会社去った後でも何らかの繋がりができお互いビジネス上で win-win の関係になることも珍しくなくなってきました。また出戻りを奨励するような会社もあります。そうした時代背景から、職場のキャリアカウンセリングということがこれからのマネージャーやマネージメントを司る上司にますます必要とされるスキルになってきています。

ここでは職場のキャリアカウンセリングが活発に行われている海外の事例に学んでみたいと思います。

キャリア開発とキャリアカウンセリング

あなたが新入社員として会社に入った時どんな思いでしたか?期待と不安が入り混じる複雑な気持ちだったのではないでしょうか。うまく会社に馴染み、仕事にもなれ、昇進した時はとても嬉しかったのではないでしょうか。 

上述の5つの要素と同時に、その会社で働き続けたいのであれば、その会社でのキャリアパスについて興味を持つと思います。 そうした時に上司からガイダンスやサポートが欲しかったことはありませんか? 

キャリア開発とは、上司に当たる人物が部下にその会社で望むことを行えるように支援することです。もっと具体的には、従業員が自分のキャリアに求めることは何かを把握し、そこに到達する方法をサポートすることです。仕事の目的や意義を見つけ、追い求めるようにできるようにします。 こうした一連の相談のことをキャリアカウンセリングと言います。

適材適所の実践につながる

こうしたキャリアカウンセリングは、「従業員のためになるかもしれないが会社の利益にはつながらない」、と考えている人がいるかもしれません。しかしそれは間違いです。キャリア開発とは、その会社で働く社員が情熱をもって仕事に取り組めるようにすることです。当然ながらモチベーションも上がります。 

従業員がどんな仕事をしたいのかがわかれば適材適所を実践しやすくなります。社員が各自の役割を全うして会社の成功に貢献できます。適材適所がうまく機能すれば、会社の利益に貢献するだけでなく、人材の流出を防ぎ、優秀な人材を維持しやすくなります。

昇進の機会が減っている

しかし、現在と昔はキャリア開発の意味が変わってきています。「ティール組織」と言うのを聞いたことがある人も多いでしょう。 簡単に言うと階層のない組織形態です。全く階層のない組織というのは珍しいですが、組織をフラットにしていこうという動きは今もこれからも続いていくと思われます。そうした階層のない組織が増えていくとどうなるでしょうか?昇進の機会が減るのです。 

日本の従来の会社であれば年功序列であることが多いため、熱心に仕事をし長い間在籍すれば自動的に昇進していきました。 しかし昇進するにはそのポストが必要です。そのポストに欠員が出なければ昇進できません。 そもそもポストがなければ昇進もないのです。

そのためアメリカの多くの IT企業ではキャリアカウンセリングにおいてある部門で昇進するだけでなく、逆に下の地位に異動したり、別の部署に横展開したりすることがよくあります。 しかしこれは従業員にとっても会社にとっても良い決断でなければいけません。特に従業員取っての成長に寄与するものでなければいけません。

キャリアカウンセリングの効用 

Corporate Executive Board 社の調査によると、従業員のキャリアカウンセリングをすることで次のような効果があると言われています。

  • カウンセリングをしないところに比べて従業員のエンゲージメントが6倍高い
  • カウンセリングをしないところと比べて従業員の定着率が4割高い
  • カウンセリングをしないところと比べて従業員の満足度が38%高い

しかし実際にはアメリカといえども、積極的にキャリアカウンセリングを行うマネージャーは2割ほどしかいないと言われています。 こうしたキャリアカウンセリングを行わないことで離職してしまう従業員が多いのです。

キャリアカウンセリングを行わない理由

大切な従業員が転職してしまっては会社にとって大きな損害です。マネージャーがキャリアカウンセリングを行うことで定着率を上げることができます。ではなぜしないのでしょうか?

  • キャリアは個人個人の問題だから上司が口出す問題ではない
  • そもそも会社にキャリアアップさせる機会がない
  • 部下がどんなことを望んでいるのか聞き出す方法がわからない
  • 日々の業務が忙しくてそんな時間を取ることができない

これはアメリカの調査ですが日本でも同じことが言えるのではないでしょうか。

キャリアカウンセリングにおける上司の役割

自分の部下にキャリアカウンセリングを行った時、部下から様々な質問が来るかもしれません。しかし全てに答える必要はありません。あなたの役割は彼らの話に耳を傾け、フィードバックを出しサポートすることです。まとめると下記のようなことになります。

  • 部下のこれからのキャリアをサポートする 
  • 部下が成長できるようにフィードバックする
  • 昇進や異動に際して従業員をサポートする
  • 部下のスキルを職種に適合させる
  • 部下が経験を積めるに育成に重点をおく

このようなことを行うことで、どんなことが部下のモチベーションを高めることにつながるのかが分かるきっかけになるでしょう。 ここで更に部下をカウンセリングするにおいて部下を3つのパターンに分けて考えてみましょう。

クライマータイプ

このタイプはあたかもひとつの山を登っていくように昇進を目指してリーダーシップの座を得ようとしている人物です。

アドベンチャータイプ

このタイプはいろんなことに興味があり一つの仕事をに留まるのではなく営業をやったりマーケティングをやったりまたは別の管理の部門で働いたり、 道なき道を進んでいくのが好きなタイプの人です。

マイナー(炭鉱型)タイプ

このタイプは簡単に言うと専門職です。一つのことをとことん突き詰めて行いたい人です。 自分の仕事や部署を変えることには興味がありません。 いかにその道のエキスパートとして自分の技を磨けるかに興味関心があります。

このように社員を3つのタイプにくくって考えてみると分かりやすくなります。 その上で部下に対して異動させた方がいいのか、同じ部署に留めて経験を積ませた方がいいのか、昇進させてリーダーシップを身につけた方がいいのか、あるいは全く別の職種で経験を積ませた方がいいのか、あるいは場所を変えて転勤させた方が良いのか会社と本人にとってベストな選択を考えます。 

キャリアカウンセリングにおける会社の役割

キャリアカウンセリングはマネージャークラスの人が一人で行うのではなく会社としてもバックアップする必要があります。会社としての役割は何でしょうか。

  • 社員がキャリア目標を明確にし、成長するのに役立つツールと研修を提供する
  • 社内の人材募集を従業員に告知する 
  • 社員をキャリアカウンセリングする方法について幹部をコーチングする

このようなことが考えられます。人事部を主体としてこうした制度を会社に作ることが求められています。こうした制度を構築することで社内の最適な人材を最も良いタイミングで適切な職務につけることができます。そうすることで会社全体としても離職率が下がるでしょう。 

キャリアカウンセリングにおける社員の役割

当然のことながらキャリアカウンセリングをされる社員も自覚が必要です。上司やマネージャーにあたる人とキャリアカウンセリングを行う際、どのような自覚が必要でしょうか。 下記にまとめてみました。

  • 自分の強み、価値、関心事を知る
  • 自分のキャリア上の関心事と目標を明確にする
  • キャリアカウンセリングで決まったことに責任を持つ 

最低限このようなことを考えてキャリアカウンセリングを受けることが必要です。こうしたカウンセリングを通して仕事の目的や意味を再確認し、 自分の成功と会社の成功に対する責任感が湧いてきます。

職場のキャリアカウンセリングの実践

キャリアカウンセリングを実際する人は上司と部下という関係が多いと思います。ここでは上司がどのようなことをすれば良いのか流れを追って説明します。また全体として言えることですがこのキャリアカウンセリングは定期的に実施するようにしましょう。 四半期に一度くらいのペースで行うのが理想です。 

カウンセリングの前

効果的なキャリアカウンセリングをするには事前に準備が必要です。 カウンセリングを行う従業員についてどんなことを知っていますか?彼らの強み、課題、望むキャリアの方向性 、どんなことが関心があるか、こうしたことを知っていますか? 知らなければ想像でもいいので事前にある程度の目星をつけておきましょう。

また同時に カウンセリングを行う部下に自分のキャリアについての関心ごとや、 自分の強み、仕事に対する姿勢について話す準備をするように事前にお願いしましょう。 

カウンセリングの最中

上述したように基本的には部下に考えさせるような質問をします。部下が話しやすいようにリラックスした雰囲気を作ることも重要です。必要であれば外でコーヒーを飲みながらあるいは散歩しながらでも構いません。 もちろんキャリアに関することです。 その上で傾聴し、 コーチングとフィードバックを行います。 どのようなオプションが考えられるか、部下自身に考えてもらいましょう。その上でアクションプランを作成し、次回のミーティングまでに何をすべきか明確にします。(具体的なアクションプランの作成に関しては次の項目で扱います)

このカウンセリングの最中が最も重要です。 基本的にはカウンセリングする側は質問に終始しましょう。どのような質問が効果的でしょうか。すでに自分の興味関心が分かってる場合とそうじゃない場合とで質問の種類が違ってきます。

部下がキャリアにおいて自分が何をしたいか分かっている場合

  • 来年は自分はどうだっていたいと思いますか?
  • 3年後には何をしていたいですか?
  • 社内で最も関心のある部署、職種はなんですか?
  • その部署で成功するためには何が必要だと思いますか?
  • 上司としてサポートできることは何かありますか?

部下がキャリアにおいて何をしたいか明確でない場合

  • あなたが最も情熱を注げるものは何ですか?
  • あなたの強みは何ですか?
  • あなたの中で何か改善したいものはありますか?
  • 最近身につけた新しいスキルはありますか?
  • もっと力を入れたい仕事はありますか?
  • 最近した仕事で満足度が高かったものはありますか?
  • あなたのキャリアを考える上で私にできることはありますか?

このように相手が明確にキャリアの青写真が描けてるかどうかで質問を変えましょう。

そしてキャリアに関して明確になっている場合は上述したように3つのパターンに部下を分けて考えてみましょう。クライマー、 アドベンチャー、 マイナー(探鉱者) の3つについてどのような助言が必要でしょうか。 それぞれのパターンごとに見てみます。

クライマータイプ

昇進するためには何が必要かを説明します。 ポストとタイミングが合わないと昇進は実現しません。 昇進するために当然ながら必要なスキルや経験があります。そうしたものを身につけるにはどうすればいいか、具体的なアクションプランを考えます。

アドベンチャータイプ

他の部署とのネットワーキングを促しましょう。気になる部署のメンバーと話をするなど、そのためのコミュニケーションをサポート、仲介しましょう 。同じように他部署に異動した人の経験談などを紹介してもいいでしょう。 万が一会社にそのような部署が見つからない場合、他の会社にするあるいはグループ会社に移るという選択肢もあり得ます。あるいは副業を認めるということでもいいでしょう。また上司としてポストに空きがないかそういった情報にアンテナを張っておきます。

マイナータイプ

より専門性を高められるような経験が積めるように支援します。同じ分野の新しいスキルを逃げるように新規プロジェクトがあれば任命します。同じような専門職のような人の働き方がどのようなものか、 同じ立場にいる人を紹介します。

部下から様々な質問が投げかけられるかもしれません。 きちんと質問に答えるためにもキャリアに対する明確な希望を把握しておきましょう。その上でパフォーマンスに関して率直な意見を上司として述べる必要もあります。 夢や希望だけでなく現実を見れるようにするのもキャリアカウンセリングの目的です。 その上で部下自身が自分で目標を設定できるようにサポートしましょう。

カウンセリングの後

キャリアカウンセリングが終わったらそれで終了ではありません。こうしたキャリアカウンセリングは四半期に一回程度、定期的に行う必要があります。 また折を見て適宜フィードバックを行うことが必要です。 アクションプランの作成はキャリアカウンセリングの時に行いますが、必要であればアクションプランの再調整もしましょう。 

アクションプランの作成

自分の部下のキャリアパスが明確になったらそれを実現するためのアクションプランを一緒に作成しましょう。 達成するための具体的な経験やスキルに焦点を当てます。ただしここでもマネージャーとしては質問に徹します。 

  • どのようなステップを踏めば良いでしょうか?
  • どのような経験が役立つと思いますか?
  • 誰が進捗を確認することができますか?
  • 達成するまでのプロセスをどのように踏めば良いかアイディアはありますか?

このような質問を投げかけ部下に直接考えさせましょう。 この上でキャリアパスを歩んでいく上で最も重要なのは知識や経験です。 アメリカでは知識や経験は3つのルートから得られると考えられています。

① 実務経験

実際の仕事をこなしていく上で得られる経験が最も重要で、最も効果的です。これはアクションプランの70%を占めるようにしましょう。 アメリカの会社でよく行われているのはストレッチアサインメントと呼ばれるものです。 今までの職務を少し変更して責任の幅を少し増やします。 現在の能力を上回る任務を与えることで能力を現場で伸ばす方法です。 

②他者から教えてもらう

先輩から教えてもらったりあるいは上司から教えてもらったり他にスキルがある人に教えてもらうことを指します。例えば営業であれば先輩の営業マンに一緒について行って取引先を回るとか、模範となる人物の近くで仕事のやり方を学ぶというのが典型的な例です。 この人から直接の学ぶということは2割ぐらいにします。

アメリカではジョブシャドウイングという手法が使われています。ある人の影になるという訳になりますが、 関心のある別の部署にいる人の仕事に密着させてもらうのです。もちろん同じ部署にいる人間でも構いません。実際の現場で得られる情報は、 書籍やビデオを見るよりもはるかに効果的です。 

③自学自習する

ウェブトレーニングやセミナー、書籍や動画などを見て自ら学ぶこと。これも有益ではありますがアクションプランの1割ぐらいを占める程度にしましょう。

こうした知識や経験を得られるようなアクションプランを作成した上で、期間を決めましょう。また進捗を定期的に確認できるようにしましょう。 またこのアクションプランには5つのチェック項目があります。英語の頭文字をつなげてSMARTと言われています。

  • Specific (具体的) — アクションプランの内容は具体的かどうか?
  • Measurable (測定可能) — 進捗具合を測定可能かどうか?
  • Actionable (実行可能) — アクションプランの内容が実行可能か?
  • Relevant (関連性) — アクションプランの内容が部下のキャリアプランに関連しているか?
  • Time Bound (期限) — 明確なスケジュール設定があるか?

このような形でアクションプランが完成したらそれを実践に移せるようにサポートします。実際には定期的に進捗の確認します。とはいえ簡単な日常会話メール等で確認しても構いません。 社員自身が自分のキャリアパスに沿って行動できるように寄り添ってサポートすればいいのです。 

まとめ

職場でのキャリアカウンセリング、またはキャリアコンサルティングはあくまでも会社として離職を防ぐ手段です。 ですが本当に従業員のやりたいことを仕事面でサポートするのが目的です。 社員の仕事で達成したいこと、満足度を高めるためにはどうすれば良いか。 同時に会社の売り上げにも貢献できるようにしなければいけません。 基本的には従業員がモチベーションが上がれば仕事に対する満足度が高まり、自然と会社の売り上げにも貢献することになると思います。 

(島田亮司)

参考文献

『The Manager’s Role in Career Coaching』『Career Coaching Self-Assessment』『Navigating Your Career』 

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