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なぜ企業研修はあまり効果がないのか?

グレゴリー・レステージ (コッター・インターナショナル副社長)※原著作者の許可を得て日本語に抄訳したものです(翻訳:島田亮司)

なぜ研修はあまり効果がないのでしょうか? 最近、アメリカのコンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーは、その理由を具体的に論証しました。

残念なことにうまくいかないケースは枚挙にいとまがありません。それでもなお、研修を実施する側は新しい研修をつくり上げ、クライアントに紹介します。そしてクライアントは、また大金をはたいて受講するのです。研修をする側も受ける側も、効果がなく、満足感も生まない負のサイクルに陥っていると言えます。

もちろん、効果があり満足度の高い研修は存在します。問題はその数が極めて少ないことです。まずはこの状況を何とかしなければいけません。そのためには研修の枠組みと価値を見直し、研修が持つ本来の力を引き出す必要があります。

研修がうまくいかない原因は、広く認識されています。それに対して、成功するための要因はほとんど認識されていません。実は研修の成否はたいてい内容の質以外の部分によって決まります。そのため、内容の改善によってうまくいくようになるわけではないのです。むしろ、よく練られた質の高い研修はたくさんあります。

私たちコッター・インターナショナルでは、まず受ける側が研修を戦略的、実践的に捉え直す必要があると考えています。研修を実施する側に新しい研修を考案してもらう以前の問題です。

この背景には、受ける側がさほど重要性を感じていないことや、実施する側もクライアントの問題なので手を付けにくいことがあります。しかし、研修の成否を左右する重要な要素なのです。

効果を上げるための4つのステップ

研修レポートの作成をしても実践しなければ意味がない

事前に十分な社内マーケティングやコミュニケーションがないまま、研修が始まってしまうことがよくあります。受講者に「具体的な内容や目的を前もって知らされていたか」と訊ねると、大半が「知らされていない」と答えたという調査結果がいくつも出ています。研修を受ける側の担当者や担当部署が、研修自体の価値や意義を受講者にしっかりと伝えていないのが現状です。

これには、両極端のケースが見受けられます。一つは、「研修はあまり効果がない」という前評判を覆そうとして、担当者が研修の効果を過大に訴えるケース。もう一つは、担当者自身が「研修はあまり効果がない」と思っているため、消極的な姿勢をとっているケースです。

要するに、前者は誤った想定を抱かせてしまい、後者は何の想定も持たせません。その結果、研修に参加する人は過大な期待を持つか、ほとんど持たないかのどちらかに偏ってしまうのです。

研修を受けた結果、どのような効果が期待できるのか、現実的で正しい期待を参加者に持ってもらうことが必要です。その際、以下に挙げることに注意してください。

ステップ1 研修の限界を明らかに

まず、実施する研修で受講者は何を学べるのか、そして限界がどこにあるのかを明らかにしてください。例えば、専門家の講義を2時間聴く場合と、実際の現場を想定した2日間のセミナーを受講する場合とでは、得られる効果に明らかな違いが出ます。前者は直接的な知識の伝達であり、後者は実践的なスキル開発なのです。

しかし、それぞれの研修に限界があることを受講者が容易に受け入れてくれると思ってはいけません。担当者によるきめ細かな事前説明が求められます。

ステップ2 適した研修スタイルで

研修にはさまざまなスタイルがあります。受講者それぞれに適したものがあるでしょう。また、どのスタイルにも機能的な限界が存在します。

例えば、実際に人とやり取りをして学んでいく実践的な研修スタイルは、やりがいがあると同時に体力も消耗します。また、好きなときにオンラインで資料閲覧できることは便利ですが、画面情報だけでは身に付かないこともあるでしょう。あるいはコーチングを電話で受ける場合は、自分や相手の心に集中できる反面、電話をしながら他のこともできるので、かえって集中力が分散してしまうかもしれません。

それぞれの研修スタイルの長所や短所を、時間的、体力的、そして実践的な観点から認識し、学びをどのように活かすことができるのか、事前に想定しておくことが必要です。

以上は一見些末でテクニカルな面が強いかもしれませんが、研修を成功に導くための重要なポイントです。

ステップ3 受講者に自主性を持たせる

「馬を水場まで連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」という諺がありますが、研修も同じです。主催する側は、素晴らしい研修を提供することはできても、研修を実際に役立てるかどうかは受講者次第なのです。

そのため、受講者に自主性を持たせ、学びを実践させることが肝要です。その説明責任は90パーセントを受講者に持たせ、残りの9パーセントを上司に、1パーセントを担当役員に振り分けるのがいいでしょう。三者の責任分担が同じだと、学びが実践されずに終わってしまう危険性があるからです。

ステップ4 位置付けを明確に

最後に、その研修が人材開発全体の中でどのような位置付けにあるのかを明確にしておく必要があります。これまでや今後の研修と比較し、受講者に体系的に説明してください。そうすることで、会社の人材開発が幅広くそして深いレベルで戦略的に構築されていることが理解されるでしょう。

人材開発の担当者が、実施する研修は受講者個人や所属部署、そして会社全体が掲げる目標に対してどのように役に立つのかをきちんと説明できないようであれば、研修自体がなおざりにされていると見ていいでしょう。また、他の研修とのつながりを図式化して説明できないなら、その研修を単なるイベントとして催しているにすぎないと言えます。

これら4つのポイントは、極めて常識的なことではないでしょうか。しかし、これらはほとんど実行されていないのが現状です。研修を受ける側だけでなく、実施する側もこのことを真剣に考えなければいけません。

煉瓦とモルタルの関係のように研修をやりっぱなしではなく定着させることが大事

受講者と自信を持ってコミュニケーションを取り、彼らを勇気づけてください。研修の学びにある可能性、学びを実践する必要性、他の研修との関係性を正直に打ち明けましょう。

研修を実施する意義や目的について、改めて社内で理解を深めてください。社内イントラでの掲示や資料配布、説明会、一対一の面接など、いろいろな方法が考えられますが、必ず研修を行う前にしなければいけません。もしあなたが受講する立場にあるなら、事前に社内の研修担当者や上司に問いただしてください。彼らはあなたの真剣さに感心することでしょう。

研修となると、つい内容にのみ目がいきがちになります。しかし、煉瓦をうまく積み上げていくには、煉瓦の間にあるモルタルがしっかりしていないといけません。研修においてのモルタルとは、研修の意義や目的を正しく理解することなのです。

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