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ビジネスを変化させるために心は若く!

ジョン・P・コッター(コッター・インターナショナル社長)

この記事は原著作者の許可を得て日本語に抄訳したものです。(翻訳:島田亮司)

コロナウイルスのワクチンが開発され、多くの人がワクチン接種を開始していますが、世界的にみるといまだにパンデミックの真っただ中です。今、私がこの原稿を書いているあいだにも、何千とはいかないまでも、アメリカだけで何百もの会社が、お決まりの「沈みゆく道」をたどっていることでしょう。どんな会社も創業時はスピードがあり、機敏に活動し、組織は階層的というよりネットワーク的に機能しています。大きなチャンスに対しての緊迫感が冴えわたっていて、社員の多くは何らかの形で率先してリーダーシップを発揮し、そのチャンスをモノにしようとするでしょう。

しかし、目の前の業務に埋没し、自分たちに起きていることを見落としてしまうことによって、気づかぬうちに当時のダイナミズムから組織的に遠ざかってしまいます。つまり、組織計画、予算取り、人員配置、評価・報酬、課題の解決等を備えた確実で効率的な縦組織に向かってしまうのです。あらゆる力がこの方向へ働きますが、特に顕著なのは「恐れ」による力です。確実で効率的な会社運営ができなければ、近い将来とんでもない問題が起こるのではないかという恐れです。ほとんどの会社にとって、このパターンに陥ることはよいことではありません。

会社がこのようなライフサイクルを辿る背景には、いったい何があるのでしょうか? ある時点において、イノベーションは下方曲線をたどります。そしてその結果、成長が鈍化します。ところが、十分なマーケットシェアや専売特許、あるいは大きなブランド力など、競争原理を働かなくさせる「強み」がある場合、会社は利益を上げ続け、「すべて順調だ」と勘違いしてしまうのです。

それでも、遅かれ早かれ、世の中の変化のスピードによって戦略的な迅速性を迫られ、今までの強みを失ってしまうのです。株式の成長は横ばいになり、クリエイティブで優秀な人材が職場を去ってしまいます。そして輝かしい過去の栄光があるだけの、遺伝子組み換え作物のように肥大化した組織になってしまいます。この現象はいたるところで見られ、シリコンバレーも例外ではありません。これでは、投資家、従業員、顧客、そして国家までもが、何も得るものがないのです。

ビジネスのオペレーションでしてはいけないこと

では、そうならないためには、どうすればいいのでしょうか。まだ新しい組織であれば、革新的な雰囲気を卑下しないことです。革新的な雰囲気を取り除くことが安全な道だと思ったら大間違いなのです。先のライフサイクルにおいては、現在の仕事に対応するために、確実かつ効率的な官僚的組織をつくることを強いられますが、それによって革新的な雰囲気はつぶれてしまうのです。

ただし、注意していただきたいのは、会社が成長する過程で生み出される優れた官僚的制度とむやみに立ち向かわないことです。ある時点において、一定のルールや秩序は必要です。社内の組織系統、計画システム、毎年数多く人材を確保するシステムなどは不可欠であり、起業家精神の名の下にこうしたシステムを壊そうとすると、やがて組織がカオス状態に陥り、約束の反故や株価の急落といった事態にもなりかねません。

あるいは、あなたの会社がすでに成熟した組織であれば、確実で効率的に行われるシステムや制度を捨てて、蜘蛛の巣型組織、スタートアップ型ネットワーク、星座的組織……、どんな呼び方でもいいのですが、わざわざこうしたものに取り換える必要はありません。日々の業務を滞りなく行うプロセスや、優れた管理制度として機能する縦組織は必要で、それ自体が問題なのではなく、それだけでは不十分なのです。

ビジネスのオペレーションでしなければいけないこと

あなたの会社がまだ若い場合、まずは「流れ」に任せることです。ただし、社内で何が起きているのか注意深く観察してください。やがて起業家的なネットワークやリーダーシップと階級組織や管理制度を併せ持つ段階を迎えることになります。私はこの段階を「デュアルオペレーションシステム」(二重経営システム)と呼んでいます。ここで重要なのが、スピード・機敏さと確実性・効率性の両方を併せ持つシステムを保持することです。ここで言う「保持する」とは、次のような意味があります。

・成熟した大人になるよう求められていても、心を若く保つことが大きな成功につながるため、このシステムで経営をしたいことを衆知すること。

・このシステムが習慣化するように発展させること。

・管理型縦組織が大きくなり、起業家的ネットワークをつぶれそうになっても、このシステムの習慣化をみんなで支援すること。

・リーダーの立場にいる人が早い段階で、繰り返しデュアルシステムについて部下に伝え、それを実際に機能させること。

もしあなたの会社が既にデュアルシステムのステージを過ぎてしまい、硬直したシングルシステム(一重経営システム)に支配されていたら、デュアルシステムを再構築してください。これは実現可能です。最新刊『Change: How Organizations Achieve Hard-to-Imagine Results in Uncertain and Volatile Times 1st Edition』でも書きましたが、実際に再構築できた会社をいくつも見てきました。昔の状況に戻るような感じですが、起業家的ネットワークと管理型縦組織が、車の両輪として機能していた過去の一時期の枠組みを復活させるのです。

昔に戻るといっても、規模も複雑性も増した会社の今後の成長を考えると、理にかなうことなのです。つまり、規模が大きくなったことで昔よりも幅広い起業家的ネットワークが構築されます。また、大きなチャンスに対して緊迫感を保ち、モノにするプロセスは、会社が小さかったときよりも、きちんとしているのです。

こうした状況を作り出すには、次のようなことをしなければいけません。

・デュアルシステムをどう運用するのか、みんなにしっかり教えること。

・起業家的ネットワークの上で、社員が戦略的なイニシャチブに情熱を注げるようにすること。

・初期の成功を称えこと。

・成功へつながる新しい変化を、管理型縦組織に組み込んで制度化し、ビジネスのコアにすること。

変革を迫る
変革を迫る

もちろん簡単なことではありませんが、不可能ではありません。言ってみれば、責任ある大人でありつつ、好奇心旺盛で、エネルギッシュで、自発的で、楽観的な若者の気概を取り戻すことなのです。

こうした問題に真剣に、そして適切に取り組む会社はとても少ないのが通常です。しかし、コロナ過の現在、おきている大きなパラダイムシフトをチャンスと捉えてください。だからこそ、課題と解決方法をきちんと理解している会社にはとてつもないチャンスなのです。このようなチャンスは、不確実性が増し、容赦ない早さで移り変わる今の社会において、大きくなる一方です。

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