⑥なぜインド人はITに強いのか?
インドは0が発明された国だからインド人は数学に強くITにも強いといったことがよく言われます。それも原因の一つですが実はカースト制度にもあったのです。
「カースト制度」あるいは「カースト」は、ヒンドゥー教にまつわる身分制度です。インド人の多くはヒンドゥー教徒なので、 インド全体としてみるとこのカースト制度は今も生きているといえるでしょう。
カーストという言葉はポルトガル語の「血」を表す 「カスタ」が語源で、インド社会では肌の色に由来する「ヴァルナ」という言葉が使われます。 基本的なカーストは、司祭階級の「バラモン」、王族や貴族階級の「クシャトリア」、商業や製造業で働く人々の「ヴァイシャ」、 人の嫌がる仕事に就く人々「シュードラ」の四つからなります。
バラモン(司祭階級) |
クシャトリア(王族、貴族階級) |
ヴァイシャ(商人) |
シュードラ(隷属民) |
アチュート(アンタッチャブル) |
シュードラの下にはさらにカースト外の身分である「アチュート(不可触民)」と呼ばれる人々もいます。 カーストは生涯変えることはできず、また異なるカースト間の結婚も基本的にありません。 また、カーストはジャーティという職業の身分制度と密接に関わっています。
カースト制度では職業が識別されている
これは職種別に千以上に細分化されており、基本的には同じジャーティ集団内の婚姻が守られています。 インドでIT産業が発達した理由のひとつには、 この職種はカーストやジャーティ成立期にはなかったので、その影響を受けないからとも言われています。
カースト制度を支えているのは、輪廻転生を信じるヒンドゥー教の世界観です。 下位カーストの者は前世で悪い行いをしたと信じられているので、上位カーストに生まれ変わるためにこの世でひたすら上位カーストに尽くすことを疑問に思いません。 1950年に制定された憲法により、 インドではカーストによる差別は法律で禁止されていますが、実際にはカーストは 人々がそれを信じる集団の中ではいまだ有効なのです。
こうしたカースト制度から逃れるため、カーストがないイスラム教など他の宗教へ改宗する人は昔からいました。 逆に他の宗教からヒンドゥー教徒に改宗した場合は、一番下のシュードラにしかなれません。
さて現代では都市部を中心に、こうした昔ながらのカースト制は少しずつですが崩れつつあります。近代的な会社組織ではいちいちカーストにこだわって仕事などしていられないし、またカーストよりも「お金が大事」という風潮もあります。 それでもインドの大部分は保守的な地方の農村部なので、カーストが人々の心から消えることは当分ないでしょう。
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