①なぜターバンを巻いているインド人は少ないのか?

(マンモハン・シン元インド首相とブッシュ元大統領)

「インド人」というと、頭に大きなターバンを巻きヒゲを蓄えたたくましい男性を連想する方も多いでしょう。 実はそうした格好をした人は、インド人全体ではごくわずかなのです。

インド人の宗教割合
インド人の宗教割合

インドには実に様々な宗教があります。 もっとも多いのが、人口の8割あまりを占めるヒンドゥー教徒です。 「ヒンドゥー」はインドの語源でもあるように、インド社会の隅々にまで行き渡っています。これは紀元前にインドにやってきたアーリア人が信奉していたバラモン教がルーツで、多神教とカースト制が特徴です。

ヒンドゥー教は長年にわたり形成されたためその教義は多様で、信仰される神も地域性が強いものですが、 ブラフマー(創造神)、ヴィシュヌ(維持神)、シヴァ (破壊神)の3神が主要な神とされています。

次に多いのがイスラム教徒です。 10世紀ごろからインド北部にはイスラム勢力が侵入してきますが、1世紀の奴隷王朝以来、デリーを中心に強力なイスラム王朝が成立してきました。 最も繁栄したのがムガール帝国です。その間、ヒンドゥー教からイスラム教に改宗する人々も増えていきました。政治的な理由もありますが、カースト制度の下に圧迫を受けていた下層階級の人々による改宗が多かったといいます。

シーク教徒の音楽グループ
シーク教徒の音楽グループ

戦後、英領インドからパキスタンとインドが分離して独立した際、多くのイスラム教徒がパキスタンへ移動しましたが、現在でもイスラム教徒はインドの人口の1割強を占める大きな勢力です。

その他にも、南インドを中心に信者が多く住むキリスト教徒 (2%)、20世紀になり復活した仏教 (1%)、仏教と同時代に成立したジャイナ教 (0.5%)、イラン起源で拝火教の別名を持つパールシー教などの信者がインドにいます。 シーク教 (スィク数ともいわれる)ですが、これは15世紀にパンジャブ地方出身のグル・ナーナクが開いた一神教です。マンモハン・シン前インド首相もシーク教徒です。

シーク教はイスラム教とヒンドゥー教両方の影響を受けており、カースト制の否定、偶像崇拝の禁止を掲げています。 男性は髪の毛とヒゲを切らずに伸ばし、頭にターバンを巻くのが一般的です。

ただしシーク教でもターバンを巻かない宗派もあります。 また、インド全体の人口に占める割合は2%と少数ながらも、 公務員や軍人、運転手に至るまで社会で広く活躍し目立つ存在です。 またインド国外へ出て行く数も多かったため、海外でで「ターバン=インド人」のイメージがついてしまったようです。

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