人の心に響く話し方―4つのポイント

2022年の11月に行われる中間選挙に向けてアメリカの政治は今大変盛り上がりを見せています。インフレ、ウクライナ情勢、中絶権利、環境問題、移民、そして未だに収束していないパンデミックなど、選挙民に訴えるべきテーマはたくさんあります。

米議会は上院と下院の2院制で、現在は上院は50対50、下院は民主党が222、共和党が211議席となっています。今年の中間選挙では下院の全議席と上院の3分の1の議席が改選されます。いまのところ民主党に不利と言われ、 上院下院、少なくとも上院に関しては共和党の議席が民主党を上回ると予測されています。

バイデン政権からすると、「コロナ対策」「インフラ投資法案」「ウクライナ対策」などの実績を強調したいところですが、なかなか選挙民に支持が広がりません。なぜでしょうか?民衆の心を掴むにはどうすればよいのでしょうか?

人とのコミュニケーションの専門家で進歩的な政治コンサルティング会社Aso Communicationsの創設者のアナト・シェンカー・オソリオによると、人の心に響く話し方をするには、単にお題目を並べるだけではだめだと言います。

そこでアナトさんは心に響き、心を掴む話し方を4つのポイントで紹介しています。

①コメンテーターではダメ

「批判するのは簡単」 とはよく言われることです。自分でやってみるのはその10倍大変なことです。例えばプロテニス選手の試合を見て、「ヘタだなぁ」と思う時はないでしょうか?では、そのヘタだと思うプレーヤーよりあなたはうまくテニスができるでしょうか?批判や批評は簡単にできます。ミスを責めることは誰にでもできます。では、あなたはミスをしない人でしょうか?逆に批判や批評をする人、あるいは人と比べてどうこう言う人の話に感心するでしょうか?人の心に響く話し方も同じです、自分独自のメッセージでなければなりません。誰かの行動や言動に対する「コメント」になっていないでしょうか?コメンテーターにならないように注意しなければいけません。

もう少し具体例を出すと、「あの店のラーメンは美味しい、あそこはいまいちだ」あるいは「〇〇のラーメンよりももっとこってりしたのが好きだ」というコメントや比較ではなく、「私は魚介だしの上品な旨みに、かつお節、昆布だし、しじみだしを合わせた醤油ラーメンにゆずの香りを散らした日本海を感じるラーメンが食べたい!」など、自分の言葉で語ることが重要なのです。

②高い道徳的立ち位置から話す

メッセージの中には自分の価値観が含まれていなければなりません。 自分の進むべき道はなんなのか。自分は何のために生まれて来たのか。自分の社会での役割はなんなのか。政治家であれば自分の所属政党の存在意義を語ってもいいですし、会社員であれば会社のミッションやビジョンを語っても構いません。例えば、「顧客中心主義であると同時に従業員の幸福を一人ひとりが考える組織である」とかです。また、自分の存在意義はなんなのか、自分の言葉で語ります。内容的には、もちろん社会を良くするためであり道徳的に立派なものである必要があります。社会を良くするために具体的にどのようなミッションを持っているかを自分の言葉で語ります。また、基本的には利他的でバイアスのない公平な内容にすることで人を惹きつけることができます。

③そのミッションが何をもたらすか

社会をより良くするためのミッションですが、具体的に何をもたらすのかが分かるように内容を組み立てます。特にあなたが訴えかける人、聞いている人、聴衆、上司、部下、友人、家族…にとってのメリットがわかるようにします。直接的にメリットがなくても間接的にでもメリットが分かるようにしてあげればOKです。しかし、全く関係がないこと、あるいはほとんど関係がないことは避けるようにします。例えば、海外と全く関係のない仕事をしている会社の上司に、アフリカの食料危機を援助するための活動をしていることを滔々と話してもあまり効果的ではありません。その上司にとってのメリットが多かれ少なかれないと意味がありません。

④そのミッションを達成するための障害はなにか

そして最後にそのミッションを達成するために障害、問題となっているものは何かを語ります。それを除去するために自分は頑張らなければいけません。そこを強く訴えることで、援助を得られやすくなります。人は困っている人を助けたいと思っています。ミッション(ここでは共通のミッションや共感を持ってもらえるミッションでなければいけません)を語られ感心をもったら、次に何か協力したいと思うのが人間の情です。そこで、現時点での障害や問題点を明らかにすることで、より協力的になってもらえます。

具体例

(2006年~2015年まで第28代首相としてカナダのトップに君臨したスティーヴン・ハーパーの演説の抜粋)

スティーヴン・ハーパー

「……5つのテーマ。5つの政策。我が国が進むべき5つの道。それぞれが、カナダ国民に低税率の具体的な利益をもたらします。

私たちの綱領「Here for Canada」は、充実した文書です。私たちが実現した低税金プラン、実現しつつある低税金プラン、そしてこれから実現しようとしている低税金プランについて書かれており、非常に具体的で詳細な公約が何十ページにもわたって書かれています。……

しかし、カナダ国民は、支出増、増税、二桁の失業率、二桁の住宅ローンの時代に戻りたくないのです。

特に、カナダの利益を念頭に置いていないケベック連合が、自らの目的のためにあらゆる支離滅裂さや不安定さを利用しようとする時期に、そのようなことをしてはならない。

それはカナダの未来であってはならないことです。私たちは、不統一の中で後戻りすることはできません。むしろ、共に前進しなければならないのです

保守党として、私たちはただ政権を取るために活動しているのではありません。私たちはカナダのために、偉大な国であるこの国を強化し、可能な限り強く、自由な国にするためにここにいるのです。過去に誇りを持ち、世界で堂々と立ち回り、未来に自信を持つカナダにするのです。

もしそれがあなたの国に対する野心であるならば、あなたは強く、安定した、国家的な、保守党の多数派政府を選ぶでしょう。そして5月2日、私は、カナダのために、そうすることを強く求めます」

これは選挙民つまり一般大衆に向かってスピーチしたときの内容ですが、①から④までの要素を見事に網羅しています。ただ、お気づきかもしれませんが、順番はあまりこだわらなくてもだいじょうぶです。①と③の要素が両方含まれていてもかまいません。

こうした内容構成は政治家が民衆の心を掴むために使えるだけでなく、一般的なスピーチや会話でも使えます。上司や部下、友人や家族に対して使えばより説得力があり、相手の心に刺さる内容にすることができるでしょう。

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