外国人社員のための “報連相”(3)正直な報告と正直な仕事

外国人社員のための “報連相”(3)―正直な報告と正直な仕事

Q:最初の研修で、報告、連絡、相談について学びました。「結論が優先される」「5W1Hの使用」「つねに相談し、独立して行動しない」と教えていただきましたが、講師は「正直に報告すること」を強調していました。実際にはどこまで実践すればいいのでしょうか?ときには事実を誇張する必要もありますか?

A:基本的には正直な報告をする勇気が必要です。

これは難しい質問ですが、私はあなたがいつも正直であるべきだと答えるしかありません。もちろん例外はあります。例えば、上司に突然知らない人物から電話がかかってきて、不在を伝えるように指示された場合です。その場合、常識的に正直に応える必要はないのは明白でしょう。
 報連相で最も重要な概念の一つである「正直に報告する」は、報連相プログレッシブチャートの最上位に位置づけられています。正直に報告することの重要性を認識することは、チャートの下のほうでも触れられています。
 かなり前に日本のある銀行がニューヨークでの業務停止に追い込まれた事件がありました。ベテラン職員Xは、上司と米国の規制当局の両方に報告する義務を果たしていませんでした。長年にわたる不正取引の結果、数千万円という巨額の損失が発生しました。Xは必死に隠そうとしたが、結局は事実を認めざるを得なかったのです。
 違法取引を行ったXはもちろん有罪になりましたが、支店長Tも逮捕され重刑となりました。裁判では、T支店長は、職員Xが自首した後、直ちに当局に報告しなかった理由を問われました。支店長Tは、トップの指示により報告を行うことができなかった供述したのです。
 アメリカの弁護士は、日本では上司の命令に背くことはできないと弁護し、無実を訴えましたが、アメリカの裁判所はそれを許さなかったのです。

<新入社員の35%は自分の良心に反する指示に従う>

問題は、先輩や上司の命令に背き、組織を守らなければならないというプレッシャーに負けずに、正直に報告するか、法に則って仕事をするかどうかです。では、どうすればいいのでしょうか?「私には正直な報告をする勇気があります」「私には法律に反する指示を断る勇気がある」と自分に言い聞かせるしかありません。
 (財) 社会経済生産性本部では、1999年から毎年、新入社員を対象とした意識調査を実施していますが、その中で「上司から、会社のために良心に背く手段で仕事を進めるように指示されました。その場合、次のどれを選びますか?」というアンケートがありました。

 ①やりたくないけど、指示通りにやる。
 ②なるべく避けるようにする。
 ③よくわからない。

 調査は毎年春と秋の2回行われます。2004年に初めて「なるべく避けるようにする」を選択した従業員が50%を超えた一方で、100人に35人は「やりたくないけど、指示通りにやる」と回答した従業員がいます。2004年以降は同様の調査を実施していませんが、コンプライアンス(法令順守)が叫ばれる現在でもある程度このような傾向があるのではないでしょうか。

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