②フィリピンの公用語はタガログ語ではない?
フィリピン国内には111の言語文化、民族グループがあり、87の言語が話されてい ます。そのグループに属する言語は多かれ少 なかれ類似してはいますが、方言ではなくそれぞれ固有の言葉になっています。フィリピ ン政府はその言語の多さに相応の問題を抱えているのですが、政府は現在マレー系のタガログ族の言葉を基本とするフィリピン語(ピリピノ語)を公用語として定めています。では、タガログ語がどうして国語の基礎となったのでしょうか。
政治経済の中心であるマニラ周辺で話されていたということもありますが、フィリピンの国立国語研究所の調査によって、 タガログ語が多くの文学作品を持ち、言語的な資質が他の諸語に比較して秀でているという結果によるものでした。 1946年のフィリピン独立時から政府はタガログ語をベースにした言語政策に取り組んできましたが、非タガログ語圏の人々は執拗に反発しました。 現在政府は、各タガログ語を母体としたフィリピン語の普及に努めています。
しかし、以上の問題を踏まえるとタガログ語だけでは意思疎通の限界もあるということで、 共通語として英語も多く使われています。アメリカは統治時代にフィリピンに大量のアメリカ人教師を送り込み、小学生から徹底的な英語教育を進めました。そこには、このフィリピンの複雑な言語事情があり、どの現地語をもってしても、教師、教材が不足していた現実があったのです。
現在、英語は公用語と同じように話されており、 教育用語としての地位やフィリピン人が海外で活躍するうえでの大きな武器にもなっています。 フィリピンはアジアでも有数の英語圏となったのです。 日本にもフィリピン人の英語教師がいたり、オンライン英会話サービスもフィリピン人が教師になっていることがほとんどです。
しかし、言語を2つ操るということは難しいことで、句や文レベルで英語とフィリピン語を随時切り替えて話すことができるかできないかが問題になってきます。 コ ミュニケーションを図る上では便利なのですが、どちらの言語を習得するにしても大きな問題になっています。さらに、地方に住む人々は母語に加え、フィリピン語、英語 (少数民族の 人々は地域の共通言語も)と3~4言語の習得が必要になってくると、どれもが完全に習得できなくなるという恐れも抱いています。 おまけに最近は英語力の相対的な低下も問題になり、 フィリピンの言語問題はさらに困難になっているのです。