④インドでのマハラジャの意味と由来
(ラージャスターンにある宮殿ホテル)
日本でもディスコからレストランまで、さまざまなところに名前が使われている「マハラジャ」。この言葉から、何か華やかなものを想像するのは日本人に限りません。 インドの宮殿ホテルのことも、 「マハラジャ・ホテル」と呼ぶこともあります。 「マハラジャ」、インド式に発音すれば「マハーラージャ」とは、正しくはどんな意味なのでしょうか?
「ラージャ」とは古代インドのサンスクリット語の言葉で、君主や貴族の称号です。 日本風に言えば「王」を意味する言葉で、もともと部族の首長を指していた言葉です。それが仏教成立時代ごろになると国王も「ラージャ」と称していたようです。
やがてギリシャや中央アジア系の王朝がインドに興るようになると、彼らは王の中の王の意味で「マハーラージャ (大王)」 と名乗るようになります。 10世紀以降は北インドを中心にイスラム系の王朝が多く現れますが、 彼らはマハーラージャではなくおもにイスラムの君主の称号である「スルターン」を名乗っていました。したがって「マハーラージャ」とは、本来はヒンドゥー教徒の王室のみを指すのです。
18世紀以降、ムガール帝国が力を失うと、その代わりにイギリスがインドを支配下に置くようになります。 イギリスは各地の王侯をそのまま温存しながら、 間接統治するシステムを作りました。それが藩王国です。1947年にイギリスの支配が終わった時、藩王国の数は584もあり英領インドの面積の45%を占めていたといいます。
インドが独立して藩王国はなくなり、マハーラージャたちはそれまで各自が集めていたの税の代わりに政府から年金をもらって生活することになりました。 しかし、やがて政府の財源不足もあり、年金は打ち切りになります。 マハーラージャたちは自分でお金を稼がなくてはならなくなり、 住んでいた宮殿や屋敷を豪華なホテルに改造したりビジネスを始めたりしました。
このあたりは、明治維新時の日本の地方藩主によく似ているともいえます。 もともと家柄もいいので、政界に進出し政治家や官僚、外交官、知事などになったマハーラージャも少なくありませんでした。
マハーラージャが多く住むために有名になったインドのラージャスターンでは、マハーラージャたちが住んでいた屋敷などを改造した宮殿ホテルが人気です。 日本からも予約できるので、インドへ行く機会があったら一度泊まってみて、マハーラージャ気分を味わってみるのはいかがでしょうか。
ちなみに、1998年、日本で一大インド映画ブームを巻き起こした『ムトゥ 踊るマハラジャ』にはマハラジャは出てきません。実際、車夫として使える主人公『Muthu(ムトゥ)』がインドでの本来のタイトルです。これは大地主のラージャを「マハラジャ」に見立てて日本語のタイトルを考えたためです。ラージャはザミーンダールという支配階級に属する貴族ですが、マハラジャ(王様)ではありません。
この映画は1995年に作られ、そろそろ30年が経とうとしています。ですが、日本にインドブームをもたらした金字塔としての地位はゆらぎません。一度、ぜひご覧ください。