「歩行者は右側通行の原則」は車道との関係のみ

最近、路側帯でのちょっとしたトラブルがありました。 反対側から来た人とすれ違いざまに肩と肩がぶつかったのです。相手はどちらかと言うとこちらに向かって突進するような形でぶつかってきました。 相手の言い分は「歩行者は右側通行だ」というものです。 歩道や路側帯を歩いていると、右側の時もあれば左側の時もある。 横断歩道でもみんな自由に左側、右側関わらず相手にぶつからないように歩いている。歩行者は右側通行というのは、どんな時でも当てはまるのでしょうか?

警視庁のホームページにこんなことが書かれていました。

「日本では、歩行者は右側通行、自転車や自動車は左側通行することが基本ルールで、歩行者の通行が優先されます。歩行者は歩道がある場所を歩き、道路を横断するときは近くの横断歩道を利用してください」

これだけ見ると歩行者は基本的には右側通行だと捉えることができます。しかし詳しく具体的にこの根拠となる法律(道路交通法10条)を見てみると、このようなことが書かれています。

第十条 歩行者は、歩道又は歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯(次項及び次条において「歩道等」という。)と車道の区別のない道路においては、道路の右側端に寄つて通行しなければならない。ただし、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないときは、道路の左側端に寄つて通行することができる。

つまり厳密にいうと、これは歩行者同士のすれ違いの原則ではなく、 あくまでも「車道に対しての歩行者の通行の原則」であることです。 歩道や路側帯内での通行を規定しているのではありません。 先日の肩がぶつかったアクシデントは、路側帯内のことなので、右側通行の原則という法律はありません。 このことはニッセイ基礎研究所に詳しく書かれています(または弁護士ドットコム)。

車道と歩道の区別がない道路
車道と歩道の区別がない道路(路側帯のない道路)

ただし、写真のように白線もなく、歩道も路側帯もない道路を歩行者が通行する時は右側を歩くのが原則のようです。 こうした道路で左側を歩いていて、仮に右側通行の人と肩がぶつかってしまった場合、 相手が「歩行者は右側通行だろう」と言われたら確かにその通りだとなります。 ただし 白線で路側帯がわかる道路であれば、 そこを通行しているかぎり右側通行という原則は当てはまらないことになります。

車道と歩道の区別がある道路
車道と歩道の区別がある道路(路側帯のある道路)

なお、路側帯の定義は同じく道路交通法第二条に以下のように定められています。

路側帯 歩行者の通行の用に供し、又は車道の効用を保つため、歩道の設けられていない道路又は道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた帯状の道路の部分で、道路標示によつて区画されたものをいう。

また、歩道の定義は「歩行者の通行の用に供するため縁石線又は柵その他これに類する工作物によつて区画された道路の部分をいう。」となっています。

幅が狭いと歩道とは見なさいと考えている人がいるかも知れませんが、路側帯しかない道路では右側通行しなければいけないというルールはありません。片側にしか路側帯がない道路も多くあります(下記の写真)。そうしたところでも右側通行が原則であれば一方の側から歩く人は路側帯を通行できないことになります。

片側にしか路側帯がない道路
片側にしか路側帯がない道路

なお、路側帯の種類やルールについては、チューリッヒのサイトに具体的に掲載されています。

警視庁のホームページの文章が曖昧なので歩行者はいついかなる時でも右側通行が原則だと思っている人がいるかも知れません。法律はきちんと正しく解釈する必要があります。

日本で暮らす外国人の皆様も、念のため交通ルールである歩行者の基本原則を知っておいた方がいいでしょう。 

「歩行者は右側通行の原則」は車道との関係のみ” に対して1件のコメントがあります。

  1. 歩くと疲れます より:

    こんにちは。まさに私もトラブルに遭ってこのページにたどり着きました。もっとこの
    ページが検索上位にあがって広く認識されて欲しいと思っています。
    貴タイトルの通り「「歩行者は右側通行の原則」は車道との関係のみ」を理解していない
    人が多過ぎます。そしておっしゃるとおり警察が車道込みの道路のことだけを説明し、
    歩道内、路側帯内のことについて言及していないため大きな誤解が発生している状況
    だと思います。

    数週間前のことですが、川沿いの両側に幅3m前後ぐらいの歩行者・自転車専用ロード
    (エンジン付きバイクや車は進入不可)が設けられているのは日本全国で良く見る光景
    だと思います。
    そこで散歩していたのですが、前のご老人が犬を連れて左側を歩いていたのでその後ろに
    従って私も左端を歩いていました。
    すると対向から中年男が右側通行(私から見て左側)で歩いてきました。その中年男は
    早々にこちらに気付いても直進的な歩き方で譲る意志は微塵も無いことがわかりました。
    しかし私の前に犬を連れて歩いていたご老人は犬を見ていて全くその中年に気付くことが
    無かったので中年男は非常に悔しそうに少し中央寄りに避けた次の瞬間また私から見て
    左側に寄ってきて私の肩に強くぶつかって通り過ぎていきました。

    すぐに追いかけなぜぶつかってきたと問い詰めましたがここでいわゆる「右側通行だ」が
    出て来ました。警察を呼ぶと騒ぎだしこちらも望むところだったのですが結局うやむやで
    離れていきました。今から思うと警察を呼べば良かったです。歩道内なのにそしてこちらは
    前の人に続き左端に寄っていたのに、中年男は私の前の人を避けた後にわざわざまた私の
    左側に寄ってきてぶつかってきたので傷害事件にすれば良かったです。

    歩道内・路側帯内では歩行者は普通に歩くときは左側だと思っています。いくつかのサイト
    にもありますが、このブログ内で紹介している「ニッセイ基礎研究所」のページ内の
    項目「対面交通のルール」の一番下の図の通りです。
    この図は車道込みの道路ですが、この図から車道(青の矢印)を取り除けば、歩行者(赤の
    矢印)が普通に歩く時はこの図のどちらにせよ結局歩道内を歩行者は左側を歩くことになって
    います。

    自動車込みの道路かどうか、歩行者や自転車だけの道路かなど何も考えず歩行者は右側通行
    だ!と言い切る人がいたらそれは問題だと思います。

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